七転び八起き#6
今回は長い話しです。研修医が終わり、臨床経験を積むことにより、次第に臨床に自信が持てるようになりました。大学病院でのお給料は、当時で15~16万円位でした。マンションの家賃が11万5千円でしたから、生活できません。必死になってアルバイト当直をしました。大学病院の平日当直が毎月2回〜3回、アルバイト平日当直が毎週1回、土日当直が毎月2回〜3回でした。その結果、総額が50万円位になりました、
私は趣味がなく、その割には当直などの肉体労働をしていたので、ストレス発散したくて仕方がありませんでした。以前に失恋したことをキッカケに、恋愛ではなく肉体的快楽のために、お金を払って、たくさんの商売女性と遊ぶようになりました。一見真面目そうに見える私ですが、裏の顔があったのです。
ある日、関連病院の医局で雑誌を見ていたら、可愛いデートガールの紹介写真を目にしました。電話で問い合わせをしたら、ラッキーなことに予約が取れたのです。渋谷の喫茶店で待ち合わせをしました。会ってみると、写真の通り可愛い女性でした。しかし、異様に白い人でした。あれ?貧血?体調崩している?風邪?などと質問しましたが、全て否定されました。では、この女性の個性、キャラクターだろうと思い、渋谷のホテル街で十分に堪能して、お支払いしてお別れをしました。
それから半年経ったある日のこと、大学病院で昼休みに医局でNHKニュースを見ていました。『!!!』突然驚きました。ニュースのテレビ画面に、渋谷で出会った女性の写真が出ているのです。ニュースの内容を聞くと、新宿のホテルで絞殺死体が発見されたとのこと。実は客に殺されたのでした。可哀想に😞…。
ふと気がついたことがありました。あの時に感じた「白い」イメージは、半年後のこの運命を見たのかもしれない。さすがに周囲の医師には話しませんでしたが、医師として何らかの役に立つかもしれないと思い、心に秘めておこうと思いました。
開業してからのことです。前立腺肥大症の手術を行った70歳前の患者さんが1カ月半してから再診にこられました。手術のお陰でオシッコが気持ち良く出せるようになりましたと、喜んでおられました。…しかし、白く影が薄く見えるのです。そこで、いろいろ症状をお聴きしても、具合の良い事しか応えません。さらにお聴きすると、そう言えば、最近胃の調子が少し悪いと言うのです。その患者さんは埼玉県在住の人ですから、地元の病院で胃カメラの検査をやってもらうように指示しました。患者さんは不思議そうな顔をしてお帰りになりました。
2ヶ月程してから、その患者さん来院されました。すると白い影が消えて普通の人に見えたのです。何かやりましたか?と尋ねると、先生の言われた通り胃カメラ検査を行ったら、胃ガンが見つかり、手術を行って無事に退院できました。悪性度の高いスキルスガンの早期発見だったのです。感謝されました。
ある日の木曜日に50歳代の地元の男性が、風邪で来院しました。一目見て『影が薄〜い!』と感じました。病状を聞いても、風邪の症状しか答えません。さらに詳しくお聞きすると、「そう言えば、胸がドキドキしています。」そこで心電図を行いました。すると、見たことのない不整脈が確認出来ました。心臓の専門医ではないので、地元の心臓内科の開業医に患者さんを紹介しました。心臓内科の先生も、これはヤバイとお思いになり、日赤病院にさらに紹介されました。結局、木曜日に日赤病院に入院して、ICU集中治療室に入れられました!しかしながら、病状が改善しないので、五反田にある高度医療のNTT病院に日曜日に転院されました。そして、その当日に患者は亡くなられたのです。その後、詳細を心臓内科にお聞きしました。すると、驚くことに風邪が原因の劇症型心筋炎という自己免疫疾患だったのです。顔を見ないで、風邪の治療だけをしていたら、誤診で患者さんを殺したことになったでしょう。
59歳の時に、小学校の同窓会が開催されました。久しぶりに同級生を見ました。すると『あれ?』と思うことがありました。黒い顔の友人が何となく白く見えるのです。でもよく見ると、確かに黒いのです?その翌年、60歳の還暦の同窓会が開催されました。そしたら再び『あれ?』と思ったのです。去年に白く見えた友人が、元の黒く見えるのです。すると、その友人から重要な発表があったのです。前回の同窓会の1カ月後、大腸ガンの末期である事実が判明したのです。最初の主治医は「治療出来ません」と告げたのでした。友人は情報を収集して、治療してくれる医師にたどり着いたのです。そして無事に手術出来たのでした。だから、あの時に白く見えたのです。ところが話しに続きがありました。肝臓に転移が見つかり、来月に肝臓の手術を予定していると。来年の同窓会に皆さんにお会いできるか分かりません。その言葉を聞いた私は友人に大丈夫だよ。過去の私のイメージを話しをして自身を持ってもらいました。翌年にも元気に会えました。前々回に会った時には、私が白内障の手術した後だったので、私はもう命が見えないに違いないと思ったのです。人工レンズであっても見えたのです。ビックリです。
この私が身につけた不思議な能力は、結局は他人の為ではなく、自分自身の為のモノだったのです。ある日の朝、洗面所の鏡で自分の顔を見ると、影が薄〜いのです。『え〜!何で半年の命なの?』と思い、すぐに血液検査をしたら、極端な腎機能低下と貧血だったのです。同級生の総合診療科主任教授を受診したら、完璧な慢性腎不全と確定されました。それが今の私です。…遊び過ぎてバチが当たったのか?、あるいは、自分の為に遊び過ぎたのか?のどちらかだったのでしょう。
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コメント
高橋先生
お世話になります。
今回のお話は凄いとしか言いようがありません。
私なんかは末期の膵臓癌の親類を目の前にして何も感じませんでした。
ただ、何となく会っておこうかなぁ!と思って旅行したので、意識しないところで感じるところがあったのかもしれませんが。高橋先生の場合は半年以内先のその人が生存するかどうかが判るんですねえ。渋谷の件は病気とは関係なさそうなんで、ミディアムですね。街中ですれ違う人達でも白黒と見えたりするものなんでしょうか?
【回答】
そうです。
でも、その人にそのような事をお話ししたら、新興宗教の信者だと思われてしまうので、伝えません。」
しかしながら、先生から「白いねぇ」と言われても、後に対応すると状況が変化する事があるのが救われます。全くの運命論となるとガックリしますが、、、
【回答】
前立腺ガンの疑いで大阪から来院された患者さんが、来院理由をお聞きする前から、影が薄かったのです。
診察と検査で前立腺ガンと、その場で診断しました。
「地元で治療されたら如何ですか?」とお話ししたのですが、私の治療を受けたいとおっしゃったのです。
「でも、私の治療はユニークで、一般の方法とは違うのですよ」と説明しましたが、「それでも構いません」とお答えになりました。
すると、目の前で薄い影が消えて、普通の人に見えたのです。驚きました。」
今度、家内とお伺いしますが、白いようであればおっしゃって下さい。
一応、家内も含め風俗関係等リスキーな仕事はしてないので(笑)、身体の方からのサインと理解して検査していきます。
【回答】
了解です。
投稿: 大塚 | 2019/10/29 09:57