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七転び八起き#9

大学病院を退職した後の救急病院の勤務は本当に忙しいかったです。交通事故、自殺、傷害事件、子宮外妊娠、卵巣嚢腫捻転、クモ膜下出血、気胸など、多数の患者さんが本当に多く担ぎ込まれるのです。私は泌尿器科医ですが、自分の専門とは無関係に対応しなければなりません。

当然、エコーの検査をかなりたくさんこなしました。救急患者さんですから、すぐに手術しなければいけないのか、そのまま放置してよいのか、時間を争う診療です。例えば、胸部外傷や腹部外傷をエコーの検査で正確に判断しなければなりません。腹痛の患者さんの場合には、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の穿孔による腹膜炎か、急性膵炎、急性胆嚢炎、膀胱破裂による尿性腹膜炎、卵巣出血や子宮外妊娠による出血などあらゆる病状をエコーの検査で判別できるのです。

さらに東大卒の内科医の山川先生が、エコー読影のコツを教えてくれました。お陰で私のエコー検査テクニックがバージョンアップしました。後に山川先生は臓器移植ネットワーク成立の責任者で最初の理事長になりました。そんなに素晴らしい医師なのに、58才で急死されたのです。…本当に残念です。

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指導を受けてたくさんの外科手術を行いました、そのお陰で外科認定医・消化器外科認定医の資格も獲得したのです。悲しい思い出がいくつもあります。深夜に自宅で寝ていたら、ポケットベルが鳴り、救急病院に連絡しました。交通事故があり、緊急手術が必要なので、、すぐに来てくださいとのことでした。当直医が形成外科の先生だけなのです。深夜にタクシーに乗り、急いで行きました。すると18歳の痩せた青年がバイクの事故で腹部を損傷しました。診察すると、出血でお腹がパンパンです。かなりの出血です。エコー検査では、大きく肝臓が割れているのです。開腹手術をしてもしなくても、亡くなる可能性は極めて高いのです。ご家族のお父様がいらしたので、手術をしても生存の可能性は五分五分ですと説明しました。納得してお父様は手術して欲しい決めました。……早速準備をして開腹手術をしました。開けた瞬間に、ドバーッと大量の血液が噴出しました。その中には肝臓の破片も大量に出ています。肝臓が真っ二つに割れていて、出血の場所が確認出来ません。割れた肝臓の裏から出血しているので、仕方なく肝臓の一部を切除しました。肝臓は3分の1になっても、再生して元の大きさに戻ります。すると、肝臓の裏に存在する下大静脈が縦に避けていて、そこから大量の出血があったのです。必死になって血管を縫合していた時に、心停止になってしまったのです。輸血も随時していたのですが、急性心不全になったのです。心肺蘇生を行いましたが、…ダメでした。(悲)手術室の外でお待ちのお父様に結果を告げるのが辛かった。

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次の悲しい事故は、小学生のお子さんが救急車で搬送されました。見ただけで即死と分かりました。顔が横に凹んでおり、まるで三日月のような顔でした。救急隊員にお聴きすると、自動車に正面衝突したのです。10分程してから、被害者のお母様が起こしになりました。先ほど塾に行くので、別れたばかりだったのに…家事をしていると、救急車が来たのは分かっていたのに…搬送されたのが息子だったとは…(悲)…私は何も言えませんでした。

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