線虫によるガンの発見
今マスコミで線虫を使ったガンの発見検査について話題になっています。線虫は嗅覚が敏感で、ガン患者さんの尿に対して敏感に反応するそうです。それによってステージ0〜1程度のガン患者も87%の確率で発見できるそうです。来年の1月から実用化されるようです。
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体長約1ミリの線虫を使ったがん検査の開発に取り組む九州大発のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」(東京)は1日、尿1滴でがんの有無を8割以上の高確率で判定できるという安価な検査法「N-NOSE(エヌノーズ)」を、来年1月から実用化すると発表した。検査費用は1回9800円。健康診断への導入を希望する企業や医療機関、自治体の申し込みを受け付けている。
線虫は土壌などに生息する微小生物。犬より優れた嗅覚で、がん患者の尿に含まれる特有のにおいに近づき、健康な人の尿からは逃げる性質を利用して判定する。がん患者1400人に実施した検査では的中率は約85%に上り、特にステージ0~1の患者は87%で判定できた。一般的ながん検査「腫瘍マーカー」よりかなり高確率という。
反応するのは胃、大腸、肺、乳、膵(すい)臓、肝臓、子宮、前立腺など15種のがん。現時点では検査でがんの部位までは判明しないが、今後は特定も目指す。
当面は尿を都内にある同社の検査施設に持ち込んで解析する。結果報告まで1週間から1カ月ほどかかる。1年目は25万人分の解析が可能で、従業員健診への導入を目指す企業から問い合わせが相次いでおり、既に約10万人分の検査が予定されている。
広津社長は「技術的な検証はほぼ終わった。がんの検診率を上げるには画期的な技術が必要。特に子育てや仕事で検診率が低い若い女性の検診率アップにつなげたい」と話した。(片岡寛)
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いかがですか?おそらく多くの人が来年の1月から、この検査をお受けになるでしょうね?しかし、気をつけなければならないことがあります。一般の検査では分からないステージ0〜1程度のガンを発見することが、果たしてその人にとって有益になるのでしょうか?もしもこの線虫検査で陽性所見が認められて、ステージ0〜1だった場合、レントゲン検査・内視鏡検査・CT検査・MRI検査・アイソトープ検査・腫瘍マーカー検査・針生検などのあらゆる検査を3ヶ月に一度は実行しないと診断出来ないでしょう。それが何年も続いたら、ガンで体調が悪くなるよりも、精神的ストレスが悪化して、日常生活を送ることが出来なくなります。
例えば、前立腺ガンの腫瘍マーカーであるPSA検査の異常値で、前立腺ガンを疑われ、4回も針生検をされて苦しんでいる患者さんがおられます。また、文献的に針生検を3回以上も行なって発見された前立腺ガンは、ほとんどが悪性度が低くて、何もしないで放置しても寿命には影響しないガンなのです。PSA検査が開発されて、1990年代から普及して、泌尿器科だけでなく内科や健診・人間ドックでもPSA検査がルーティン検査になりました。そのお陰で、隠れていた前立腺ガンの患者さんもたくさん発見されました。ところが、前立腺ガンの患者さんの増加に比例して、前立腺ガンで亡くなる人も10倍以上も増えたのです。その理由は、ガンを見つけるために前立腺の針生検でガンを刺激して悪性度を増したからだと思われます。見えない事、分からない事も、ある意味でシアワセとも言えます。
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