インポテンツと排尿障害
中高年の男性が、インポテンツ・EDでお越しになることがあります。一般的には、老化現象と思われていますが、なかにはそうでない方もおられます。
勃起は海綿体静脈と陰茎動脈と交感神経・副交感神経・脊髄神経のバランスで成り立っています。その神経中枢のタバが陰部神経叢です。その具体的な脊髄神経は、腰椎4番・5番と仙骨2番・3番・4番です。
勃起の仕組みは、こうです。視野や周囲の状況や皮膚感覚によって、脳中枢が性的興奮をします。すると、陰茎動脈(海綿体動脈・陰茎深動脈)が開き、3つの海綿体(陰茎海綿体2個、尿道海綿体1個)に動脈血液が流れ込みます。次第に海綿体は膨らみます。
海綿体の外側に存在する白膜下静脈(海綿体静脈)が、動脈血液を排泄しようとしますが、海綿体が膨らむので、外側の白膜下静脈が強く圧迫されて排泄の静脈血流が低下します。動脈血流が変わらなければ、海綿体の体積はさらに増加します。硬い白膜の体積は一定ですから、海綿体はそれ以上大きくならないので、次第に海綿体は充血し硬くなるのです。これが、勃起です。
陰茎動脈を弛緩させて開かせるのは、副交感神経+仙骨2番〜4番の勃起中枢です。
性的興奮が頂点にに達し射精すると、陰茎動脈が閉じて、海綿体に動脈血流が流れなくなります。交感神経+仙骨2番〜4番の中枢が陰茎動脈を収縮して閉じるのです。すると海綿体の充血血液は白膜下静脈(海綿体静脈)から流れ出て、海綿体は次第にしぼむのです。この一連の流れに支障があると、インポテンツのなるのです。勃起に関して一番重要なポイントが、陰茎動脈の弛緩・開放と血流です。
勃起中枢のある仙骨2番〜4番には、実は「排尿中枢」も存在しているのです。もしも、排尿障害が隠れていると、排尿中枢にはかなりの負担がかかります。排尿中枢と勃起中枢は、それぞれ独立していますが、明確に分かれている訳ではありません。神経ニューロン細胞ですから、状況に応じて、さまざまな神経ニューロン細胞とシナップス結合します。排尿回数と勃起回数を比較すれば、排尿回数の方がはるかに多いのです。排尿障害があれば、排尿中枢は神経回路を工夫して、排尿しやすいようにします。当然、近くの勃起中枢の神経回路を利用してシナップス結合して、排尿を改善しようとします。
排尿障害が長期間継続すると、勃起中枢神経回路は、正常な回路ではなくなります。結果、本来の勃起中枢の機能は低下して、インポテンツになるのです。
排尿障害の治療薬でザルティアというクスリがあります。この薬剤の副作用として『勃起』があります。この薬は尿道の平滑筋の緊張を緩める作用で排尿障害を改善するのですが、陰茎深動脈の平滑筋や海綿体の平滑筋をも緩める直接作用があるので、仙骨の勃起中枢を介さないで勃起しやすくなるのです。排尿障害でお越しの患者さんに、このクスリを処方すると、後日、患者さんは喜びの笑顔でお越しになります。
大雑把に言えば、排尿障害で疲れ切った仙骨2番~4番中枢が、勃起にまで手を貸す余裕が無くなるのです。仙骨中枢から観れば、毎日10回のオシッコは、毎日10回の勃起と同じなのです。11回目の勃起まではしませんよね?排尿と勃起のどちらが中高年の生命にとって重要かと考えれば、自ずと勃起は破棄されてしまうのです。男性の方であれば、実体験があると思いますが、若い頃に朝立ち(勃起)した時にオシッコが出にくいことを経験していると思います。仙骨中枢にしてみれば、排尿と勃起は相反する行為なのです。当然として、排尿障害があれば、仙骨中枢は勃起を捨てるでしょう。さらに真理的に言えば、『オシッコを満足に出せない男に、子どもを作らせるか!』というのが自然の摂理でしょう。
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コメント
反対に排尿障害の治療をすれば、インポテンツやEDが良くなったり、生殖能力が上がるという事でしょうか?
【回答】
可能性はあります。
100%ではありませんが。
投稿: ゴリ | 2019/09/05 20:01
34歳男性です。
4ヶ月ほど前のある日、急に勃起不全になりました。数日後、手で刺激を与えれば勃起する程度になったのですが、自然に勃起することはなく、朝立ちもかなり弱い状態です。
症状が出てから、数日後から睾丸付近に鈍い痛みがあったので泌尿器科を訪ねたところ、慢性前立腺炎の影響で勃起不全になっていると診断されセルニルトンを飲んでいます。
セルニルトンを飲み始めてから2ヶ月近くになりますが、痛みはほとんどないのですが、勃起不全はなかなか改善されません(手で刺激を与えても90%ほどになれば良い方)
高橋先生のブログを見つけ、新書を読み、排尿機能障害は全く意識しておりませんでしたが、健康のためと思って意識的に水を多く飲み多くトイレに行っていたことに気づかされました。
まずは水を減らすことから始めたいと思います。
やはり排尿障害の治療薬も飲まないとやはり改善は難しいでしょうか?
医者からはストレスが原因ではと言われたり、年齢的なこともあると言われるのですが、感覚的にストレスだとは感じていませんし、年齢的にもまだその他の箇所はいたって健康です。今のところ本当に原因が不明だったので高橋先生の記事に希望を感じコメントさせていただきました。
投稿: 大谷 | 2022/04/03 15:04
34歳男性です。
4ヶ月ほど前のある日、急に勃起不全になりました。数日後、手で刺激を与えれば勃起する程度になったのですが、自然に勃起することはなく、朝立ちもかなり弱い状態です。
症状が出てから、数日後から睾丸付近に鈍い痛みがあったので泌尿器科を訪ねたところ、慢性前立腺炎の影響で勃起不全になっていると診断されセルニルトンを飲んでいます。
慢性前立腺炎の原因は隠れた排尿障害が原因です。治療すれば治るでしょう。
セルニルトンを飲み始めてから2ヶ月近くになりますが、痛みはほとんどないのですが、勃起不全はなかなか改善されません(手で刺激を与えても90%ほどになれば良い方)
高橋先生のブログを見つけ、新書を読み、排尿機能障害は全く意識しておりませんでしたが、健康のためと思って意識的に水を多く飲み多くトイレに行っていたことに気づかされました。
まずは水を減らすことから始めたいと思います。
やはり排尿障害の治療薬も飲まないとやはり改善は難しいでしょうか?
医者からはストレスが原因ではと言われたり、年齢的なこともあると言われるのですが、感覚的にストレスだとは感じていませんし、年齢的にもまだその他の箇所はいたって健康です。今のところ本当に原因が不明だったので高橋先生の記事に希望を感じコメントさせていただきました。
投稿: 大谷 | 2022/04/03 17:50