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β3作動薬の効果

 

 

Smmechb_20190921100001 過活動膀胱の治療薬であるベオーバやベタニスは、平滑筋の細胞膜に存在するβ3受容体(レセプター)という『スイッチ』に作用するのです。このβ3受容体は、平滑筋を積極的にゆるめる作用を持っています。α1受容体は、その逆で、平滑筋を積極的に緊張させる作用があるのです。つまり、交感神経の作用点スイッチであるα1受容体とβ3受容体は、相反する作用のスイッチなのです。

排尿障害が存在すると、膀胱出口の一つである膀胱三角部に負担がかかります。膀胱三角部は主に『尿意』の受信機センサーでもあります。長い年月をかけて膀胱三角部に負担がかかるので、センサーが過敏になるのです。それが頻尿や尿意切迫感などの『下部尿路症』の症状になるのです。

★下部尿路症は、前立腺肥大症、過活動膀胱、慢性前立腺炎、慢性膀胱炎、間質性膀胱炎、心因性頻尿、膀胱疼痛、慢性骨盤疼痛症候群などです。

一般的には、この膀胱三角部を無視して病気を考えるので、病気の症状の複雑さの訳が分からなくなるのです。臨床経験上、この膀胱三角部が尿意の専門領域で、尿意の情報が脊髄神経回路を介して、頻尿・尿意切迫感・残尿感・切迫性尿失禁・痛み・かゆみ・シビレなどになるのです。いわゆる関連痛・関連症状なのです。膀胱三角部には、β3受容体が多く存在すると思われます。そのために、β3作動薬を投与すると、膀胱三角部の緊張がゆるんで尿意や痛みが軽くなるのです。

Bladside2 しかし、β3作動薬にも、抗コリン剤と同じくオシッコの出が悪くなることが数パーセントあります。その理由は、β3受容体にも膀胱壁の平滑筋に分布している患者さんがおられ、排尿時に膀胱壁の平滑筋が緊張をゆるめて、膀胱出口がロート状にならないからです。患者さんによって、受容体の分布・配分が微妙に違うので、治療する医師は、患者さんにピッタリ合うクスリを見つけるべく、常に試行錯誤・工夫しなければなりません。

しかし、β3受容体とα1受容体がすべての平滑筋に均一に存在する訳でもなく、また人によっては分布も異なる、ある意味で、その人の『個性』なのです。

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