尿失禁の発見法
前回解説したように、隠れた排尿機能障害が、長年かけて膀胱出口の位置と尿道括約筋の位置を下方に無理矢理下げてしまったことが、腹圧性尿失禁の原因だったのです。
さらに、排尿機能障害は膀胱三角部を過敏さにするので、過活動膀胱による切迫性尿失禁にもなります。泌尿器科学会の過活動膀胱のガイドラインには、過活動膀胱の患者さんに、相当数の切迫性尿失禁があることを認識していますが、その原因が不明のままです。
過活動膀胱の原因を追求しないでガイドラインを作り、対症治療だけに固執しているので、プロとは思えない現実になるのです。
前回よりも、現実に近いイラストを作りました。膀胱を真横から観察している状態です。恥骨が前、仙骨が後ろです。
腹圧をかけて排尿していると、膀胱の位置も尿道括約筋(骨盤底筋)の位置も下方に低下して、漏れやすい(腹圧性尿失禁)形になるのです。ここまでの形になるには、かなりの年月が経っていることになります。特徴的な所見は、膀胱排尿筋が膀胱出口の方向から、次第に尿道括約筋の方向に向いてしまうのです。
膀胱括約筋も排尿機能障害で排尿筋と綱引き状態になるので、次第に大きくなり、膀胱出口がいかにも『出口!』というように見えるのです。そのために、膀胱出口が開いたような形状になります。結果、咳やクシャミなどの鋭い腹圧で、その開いた出口から尿が漏れる=腹圧性尿失禁になるのです。また、相対的に膀胱三角部も厚くなります。結果、尿意センサーである膀胱三角部に負担がかかっているので、頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁になるのです。
過活動膀胱の切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の原因が同じですから、過活動膀胱の患者さんに腹圧性尿失禁が合併するのは当然です。
超音波エコー検査で、膀胱排尿筋の走行と膀胱三角部の厚さと膀胱出口の形状で、腹圧性尿失禁を連想できるのです。
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