病気の個性
例えば、「排尿機能障害」が存在したとしても、必ずしもそれに見合った常識的な症状が発現するとは限りません。オシツコが出にくいとか、頻尿という典型的な症状であれば連想し易いのですが、しかし、子どもの頃からオシツコの近い、冷え性では、異常とは思いませんよね?そこに盲点があるのです。そういう患者さんは子どもの頃から排尿機能障害があり、頻尿や冷え性が体質だと思い込んでしまうのです。また、体質は遺伝ですから両親や家族も頻尿で、それを見ていれば、当たり前だと思ってしまうのです。
医師が誤診してしまうのは、脊髄神経回路を介して修飾されるので、多彩な症状が出るからです。一般的に【1つ症状≒1つの病気】というワンパターン認識が多いのです。例えば、心筋梗塞は胸の激痛が典型的な症状ですよね?しかし、心筋梗塞の他の症状には、左小指の痛み、左五十肩の痛み、左虫歯の痛みだけの人もいます。これらは既に知られた事実です。何故かと言えば、これらの症状を放置して手遅れで亡くなられた患者さんがたくさん存在したので、常識として知られたのです。これらの症状は「関連痛」という概念です。これらの症状も脊髄神経回路を介した症状で、脊髄神経回路の個性により様々な症状が出るのです。
病気の原因である臓器を支配する神経部位が、脊髄の下位にあればある程、多彩な症状になるのです。例えば、膀胱や前立腺の神経支配は仙骨2~4(S2~S4)です。脊髄の一番下が仙骨5ですから、最下位の脊髄神経に位置します。膀胱や前立腺から得た情報を50センチ~80センチの脊髄の長さを通過して脳中枢に伝達するのです。伝達する脊髄神経ニューロンの1本の長さが50センチ~80センチもある訳もありません。脳中枢に至るまでに何回かリレー伝達(シナプス結合)をするのです。病気が長期間であると、病変部の過敏さが増して情報量が突拍子もなく多くなります。そうなると、標準の脊髄神経経路だけでは伝達処理し切れません。仕方がなく、リレー伝達する際に、他の神経経路ニューロンに情報を一部渡して(シナプス結合)しまうのです。その渡した相手ニューロンが陰部の痛みニューロン経路であれば陰部の痛みに、腰の痛みニューロン経路であれば腰痛に、胃の痛みニューロン経路であれば胃の痛みになるのです。
病気の症状は脊髄神経回路の個性=患者さんの個性でもあります。ですから、医師は患者さんの訴えることを真摯に聞かなければなりません。
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