科学的思考の盲点
標準偏差とは、さまざまな概念の母集団の大多数を把握して、その母集団の性格を知ろうとします。具体的な数値で示すと、平均値±標準偏差(SD)です。例えば、平均値±1SD が約68%です。
次に平均値±2SDは約95%になります。細かく表記すると、次のようです。
±1.0 SD:68.3%、±1.5 SD:86.6%、±2.0 SD:95.4%、±3.0 SD:99.7%
母集団を病気に関する標準的な知識と考えて話しを展開します。間質性膀胱炎は原因不明、過活動膀胱も原因不明、非細菌性慢性前立腺炎も原因不明です。原因不明ですから、治療は対症療法です。私のクリニックには、大学病院や有名病院でそれらの診断で治療をしても治らずに来院される方がたくさんおられます。私の考えでは、それらの病気はすべて排尿機能障害が原因と認識しています。その認識で治療すると、ほとんどの患者さんは症状が改善します。
一般的に思われているこれらの病気の原因不明の標準知識は、±1SD=68%程度でしょう。つまり、32%は誤診です。さらに間違った治療も±SD=68%でしょう。診断の正確性と治療の正確性を掛け合わせること、すなわち68%✖️68%=46%になりますから、54%の患者さんは治らないで当院にお越しになると考えるのです。
もう一つの例として、PSA値が高く、前立腺ガンを疑われる患者さんが多く存在します。PSA値が高くなる原因は、❶排尿機能障害❷前立腺肥大症❸先天性❹慢性炎症❺前立腺ガンといくつもあるのです。ところがPSA値が高い=前立腺ガンとう知識だけで検査をするので、見つけなくても良いラテント癌が発見されて、過剰な診断と過剰な治療を受ける事になり、患者さんの人生を不幸に陥れるのです。
以上のことから、PSA値が高い=前立腺ガンという概念の正確性は、多くても±1SD=68%でしょう。また、前立腺ガンの生物学的性格を無視した標準治療の正確性もまた±1SD=68%でしょう。その結果、先ほどと同じく、PSA値が高く針生検で前立腺ガンと診断された患者さんの半分以上の54%の方が、過剰診断と過剰治療を受けていることになります。
ちなみに、血液検査の一項目の正常値も、検査結果の母集団の90%が含まれる範囲が正常値になります。±1.5SD程度です。10%の人は異常はありませんが、正常値ではないと判断されます。2項目が正常値になる人は、90%✖️90%=81%です。3項目が正常値になる人は、90%✖️90%✖️90%=72%になります。健診や人間ドックなどの血液検査は20項目以上ありますから、すべてが正常値になる人は、90%の20乗ですから約12%なります。したがって、健康であっても血液検査20項目で異常なしと診断される人は、12%しかいません。つまり、健診や人間ドックで異常を指摘される人は88%ですね。この数字はチョッと大げさかもしれませんが、健診や人間ドックの結果で心を乱してはいけません。 健診や人間ドックは、ある意味で病気の恐怖に陥れるための手段?とも言えます。
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