七転び八起き#5
膀胱腫瘍の手術が無事に終わり、オペルームのナースステーションでひと休みしていると、私に電話がかかってきました。過去に腎臓ガンの手術をして、現在透析中の入院患者さんが、透析中に突然死したと言うのです。急いで手術室から透析室に向かいました。すると、透析室の前に突然死したご主人の奥さまが立っておられました。奥さまは、何が起きたのか、まだ何も聴いてはいません。私が透析室に入ると、たくさんある透析ベッドの1つに数人の医師が集まり心臓マッサージや人工呼吸などの心肺蘇生を必死に行っていました。透析室の腎臓内科の講師と思われる先生が、「透析中に突然死した。心肺蘇生を30分以上やっているが、回復の見込みはない。泌尿器科の入院患者だから、奥さんに説明してくれ。ただし、他の透析中の患者に恐怖を与えないように、奥さんが静かに入るように説明してくれ。」
『透析室の責任者が説明せずに、透析作業をしていない見ていない私が説明する?』『しかし、上の先生からの指示なので仕方がない……⤵︎』透析室を出て、おどおどしている奥さんに勇気を出して状況を説明しました。……「透析中は血液を体の外に出し、透析装置に入れて濾過し老廃物を除去して再び患者さんに戻します。血液透析による血液循環血液量の変動のため急性心不全を併発することがあります。ご主人がその急性心不全になり心肺停止になってしまいました。心肺蘇生を続けたのですか、残念ながら蘇生できませんでした。これからお部屋に入って頂いて、ご主人にお会いして頂きますが、透析中の他の患者さんが『いつかは私も……⤵︎』と思われるので、静かにお会いしてください。」
「では、……どうぞ」と部屋に案内すると、心肺蘇生をされているご主人の姿を見るなり、「きゃああ!あなた〜!」と叫んでご主人のベッドに駆け寄ったのです。透析室の責任者の医師は『この野郎!静かにさせろと言っただろう!』という表情で私の顔を鋭い目つきで睨みました。仕方がないですよね?だいたい透析室の責任者が透析中に急死した患者さんのご家族に直接説明もしないで、現場に居合わせていなかった私に説明させ、責任転換するのですから、ハッキリ言って無責任極まりないでしょう。予想通り、この医師は教授にはなれませんでした。……まさか34年後に、自分自身が慢性腎不全になり血液透析室で治療を受けなければならない人間になるとは思ってもみませんでした。……トホホ……(´・_・`)⤵️透析中の私は、突然死の可能性は覚悟しています。この事も私に対する神さまからのヒントだったのかもしれませんね?
午後5時を過ぎてから教授室に行き、今日1日の報告をしました。すると、出血の膀胱部分切除した代議士の患者さんを教授と2人で回診に行き、教授は患者さんから感謝されていました。……患者さんは私の行為のことは知りません。……患者さんがハッピーになればいいのです。長い1日でした。ちなみに急死した患者さんの主治医は助教授でしたから、教授は報告を聴いただけでした。(つづく)
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