慢性の精巣上体炎で悩む患者さん
原因不明の睾丸の痛みで無料相談の電話がよくかかって来ます。
すでに付いている病名は、慢性の「精巣上体炎=副睾丸炎」と診断される患者さんがほとんどです。もしも本当に「副睾丸炎」であれば、睾丸のそばの副睾丸に触ると痛いシコリ=硬結が触れる筈です。
ところが、その硬結がないのに痛みだけで副睾丸炎=精巣上体炎と診断するのは、「いい加減」な診断=誤診です。さらに延々と繰り返し繰り返し抗生剤・抗菌剤を投与して、尿検査で細菌培養を何回もするのは、バカな医師が多くいるのが現実なのです。証拠もないのに「いい加減」な治療をしている医師のなんと多いことか…。
当然、治らない患者さんは何ヶ月も悩み続けるのです。科学をベースにして医学を研究している医師が、本当に情け無いのです。
http://hinyoukika.cocolog-nifty.com/cp/2013/06/post-710d.html
今回の患者さんは、平成30年8月から右睾丸の摘ままれるような痛みを感じ、なかなか治らないので、11月に地元の泌尿器科を受診して「慢性精巣上体炎」と診断されました。延々と抗生剤を処方されても治らずに、インターネットで高橋クリニックを探し当てて、平成31年2月に来院された40歳代の患者さんです。
エコー検査で膀胱・前立腺を観察すると、予想通りの所見でした。
排尿筋の先端が開いており(赤い矢印)、排尿障害を示唆しています。当然ですが膀胱三角部が厚く(肥厚)なって台形に見えます。膀胱三角部は尿意のセンサー部分ですから、厚くなっている=肥厚=頻尿の筈です。ところが、この患者さんは、1日7回と、それほどひどい頻尿ではありません。さらに膀胱粘膜が凸凹(黒い矢印)しており、排尿障害によって膀胱に負担のかかった肉柱形成が認められました。
また、超音波エコーのプローブをチョッとずらして観察すると、前立腺結石も認められました。これも排尿障害の証拠と言えます。
この患者さんは膀胱頚部硬化症による排尿機能障害が作る膀胱刺激症状が、本来ならば頻尿になる筈が頻尿にならなくて、脊髄神経回路の特性により、右睾丸の痛みとして錯覚しているものと判断し、αブロッカーであるタムスロシン(ハルナールのジェネリック)とベタニスを処方しました。
1か月後に患者さんが再診されました。患者さんによると、薬を服用して1週間で痛みは消え、排尿回数も7回から5回に減り、1回尿も量が増えたそうです。さらに初診当日には話されていなかった過敏性腸症候群の下痢症状も治まったのでした。
| 固定リンク
コメント