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謎の病気「原因不明の慢性胃痛症」実は…

Bns19122m4808063平成18年5月に来院した47歳の男性患者さんです。
平成11年頃から会陰部痛と左睾丸痛・腰痛があり、慢性前立腺炎の診断で、長らくセルニルトンを服用しながら経過を見ていた方です。18年の4月頃から、痛みが次第に強くなり改善しないために、その年の5月に高橋クリニックを初めて受診しました。
尿流量測定ウロフロメトリー検査では、ご覧のように、スパイク状の排尿曲線を示し、腹圧性の排尿曲線です。
Bns19122m48080622D画像では、前立腺が膀胱内に突出した形状で、前立腺内に石灰を認めました。
排尿障害による慢性前立腺炎症状と判断し、ハルナールを処方しました。1ヵ月後、痛み症状は半分以下になり、治療は有効で、3ヵ月後の症状は、0%~20%で患者さんも満足して通院を続けていました。

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初診から2年近く経過した平成20年の3月に、慢性胃炎症状で苦しんでいるというのです。常にムカムカしていて、食後、特に食べ過ぎたり冷たいものを飲むと胃が痛むのだそうです。ゲップが気になるといいます。
内科で胃カメラなどの様々な検査を行いましたが、原因不明とのことで患者さんは悶々としていたのです。
患者さんから慢性前立腺炎との関係を問われました。もちろん確証(エビデンス)はありませんが、関連痛の理論により可能性はあると説明しました。その話の1週間後、患者さんが内視鏡手術を強く希望され、平成20年6月13日(金)、実施しました。
3D画像は、平成19年の9月の時点で検査した所見です。膀胱内から観察した膀胱出口ですが、12時・3時・6時の位置に硬化像が容易に観察できます。

現在、私は関連痛症状に対してトリガー・ポイント手術を行なっています。関連痛を誘発可能な程度の麻酔レベル(仙骨神経ブロック0.25%マーカイン20㎖)で手術を実施します。患者さんの協力が必要な手術です。
さて、この患者さんの膀胱出口硬化像の12時と6時の切除の際には、なんと腰背部痛が誘発されました。胃が痛くなる患者さんに背部痛があるのは有名ですから、少し胃に近づいた?と思いながら、膀胱出口硬化像の3時の位置を切開すると…なんと!何と!…「胃痛」が誘発されたのです!下部尿路を内視鏡手術して「胃痛」が誘発されたのです。…「胃痛」で苦しんでいる患者さんの内視鏡手術で「胃痛」が誘発されるのは偶然ではないでしょう。手術中患者さんと一緒に大喜びです。膀胱出口に胃痛のスイッチ=トリガー・ポイントの存在を確認したのです。これがエビデンスです。

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本日6月16日(月)にカテーテルを抜きました。
その直後の3D画像です。上の手術前の3D画像と比較して硬化組織が薄くなっているのが分かりますか?膀胱出口の12時の位置はまだ組織が残っているようですが、6時と3時の位置は完全に消失しています。
喜ばしいことに、術後~現在まで患者さんの胃の痛みは完全に消失しています。この患者さんは、肩こりと首が回らないという整形外科的な症状がありましたが、その症状も消失しました。やはり関連痛だったのでしょう。

【備考】
この記事は、平成20年6月に作成した記事です。

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コメント

先生いまだにこんな記事があります。
頻尿にはとりあえずアルファブロッカーが早く常識になって欲しいです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181030-00000001-withnews-sci
★回答
本当にひどいでしょう?
一流と思われる泌尿器科医でさえも、この程度の理論展開です。
慢性前立腺炎の治療薬で選択肢としてα1ブロッカーとガイドラインに記載されているのに、なぜ慢性前立腺炎に効き目があるのかを考えないのか?不思議です。

投稿: | 2018/11/04 12:33

高橋先生
お世話になります。
ヤフーの頻尿の記事はユ○ナールのコマーシャル記事ですかね。
途中まで読むと慢性前立腺炎の頻尿の治療が難しい、という話になってきて、核心的な話になるかなぁ〜と期待してましたら、ユ○ナールで良くなるよ、というだけの話でズッコケました。
ところで以前、慢性前立腺炎による睾丸痛で困った際、大阪で開業している有名なペインクリニックに受診希望の予約の電話をしたところ、陰部痛の方は受け付けていません、と言われたことがありました。その理由は触れられませんでしたが、明らかに治療や対応が難しいと感じていると想像しました。
ペインクリニックという診療科は癌による慢性疼痛などは積極的に見えるのですが、あまり病態が解らない痛みで陰部という扱いにくそうな場所は対応しにくいと感じているのでしょうか。
★回答
癌性疼痛は、ステージⅢ〜Ⅳの癌の症状ですから、治らないのは当たり前と思われていますが、慢性前立腺炎の痛みは原因不明なので、治療する根拠が見えないからでしょう。」

陰部痛などおそらく慢性骨盤痛症候群と言われる疼痛の起こる病態は様々あるんでしょう。例えば高野病院の消化器の高野先生は大腸の機能的な病態仮説を立てていますし、高橋先生は排尿障害という病態仮説を立てられています。
★回答
関連痛の原因は、各臓器で起きる筈です。」

薬物療法や手術による改善結果から高橋先生は十分にエビデンスを示されているとお見受けしますが、何故、学会では追試していこうというムードさえ無いのでしょうか?
★回答
奇想天外の知恵に対して、追随する勇気がないのです。
教科書やエビデンスがない事は信じないのです。
しかし、海外で認められると、その知識は日本に輸入するのです。」

本当に私もペインクリニックの件では医療難民になった気になりましたが、これから生まれてくる子供にも一定割合で、慢性前立腺炎等に罹患し、頻尿や陰部痛で苦しむ人が現れてくると思います。将来、医療難民になって途方にくれる思いをさせたくないですね。
やはり、病気で困っている当事者自身達が声をあげていかなくちゃ、動いて行かないかもしれませんね。
しかし、いろんな病気の患者会がありますけど、乳癌など同じ病名で集まりやすい疾患もあれば、慢性骨盤痛症候群の様に様々な病態の複合状態で集まりにくい疾患もありますので、集まりやすくなる様に、患者の一人としては泌尿器学会でも病態の解明を積極的に進めてもらいたいと感じています。

投稿: ○○泰則 | 2018/11/04 16:01

高橋先生

お疲れ様です。
知り合いもまた長きに渡り泌尿器科にかかっており、私以上に苦しんでいます。

何度か高橋先生の事を話しましたが未だに受診するつもりはないようです。
一年の間に水圧拡張を三回もするなんて明らかにおかしくないですか?

私はその知り合いに少しでも楽になってもらいたいと願っているのですが、なかなか響かないようです。

人間の思い込みやマインドコントロールというのは本当に頑固で恐ろしいものと感じます。
私は若い頃、ある宗教にのめり込んだ時期がありました。
その頃は誰に何を言われようとも頑として聞き入れる事が出来ませんでした。
今なら十二分にマインドコントロール状態だった事が分かります。

その知り合いからすると私は、やはりマインドコントロール状態に見えるのかも知れません。

「どうして高橋先生の方針や考えが一番正しいと断言出来るの?」

私はつくづく思います。
何が本当に正しくて、その正しい情報をキャッチ出来る為には一人ひとりは何が必要ですか?
どう生きていたら正しい事に辿りつけますか?

善も悪も幸運も不運も紙一重の世の中を私たちは否応なく
生き生かされている。(私はそのように考えます。)

日々は何が一番、必要な事なのか本当に考えています。
★回答
信じるも信じないも、その人の運命なのです。
無理強いしてはいけません。
その友人が今の治療で満足しているのなら、『まあ、いいか』と思えば良いのです。


投稿: | 2018/11/04 22:17

いつもブログ拝見しています。関連痛についてお伺いしたいです。関連痛のトリガーポイントは膀胱頸部に存在するのか、膀胱三角部に存在するのか、人によって存在する場所が違うのか教えてほしいです。
★回答
人によって違います。
その見つけ方として、この症例のように、術前にエコー3D画像で確認して、手術に望んだらトリガーポイントだったのです。」

また、トリガーポイントの術中の探し方も解説していただきたいです。よろしくお願いします。
★回答
術中の内視鏡では、分かりません。
エコー画像を頭に描いて手術するだけです。

投稿: A | 2018/11/08 20:58

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