前立腺ガン2年間放置した、その結果…
3年前の平成28年7月にPSA値8.31と高くて来院した50歳代の男性患者さんのエピソードです。
触診とエコー検査で前立腺の右葉に前立腺ガンが確認できました。私オリジナルの穏やかな治療を開始しました。5ヶ月経過すると、エコー検査でも触診でも、ほとんど確認ができないほど前立腺ガンは小さくなりました。その患者さんは、埼玉から通院していましたが、家庭の事情で九州に転居することになりました。
遠方の患者さんには、お薬を着払いでお送りすることはできますから、そのようにお話しをしていました。
ところが、この患者さんは、転居の前後である本を読み、「癌は何もしないで自然に任せるべきだ」という内容に感銘を受けて、お薬を止め治療を何の相談もなく中止してしまったのです。せっかく治療効果が得られたのに…私からしてみれば、顔にドロを塗られた思いです。その後、2年余り何もせずに前立腺ガンを放置してしまったのです。
ところが、最近になって健診で内科の医師がPSA検査したところ、PSA値が57を超えるほど高くなってしまいました。地元の泌尿器科を受診したら、このまま何もしないでいると、苦しんで死ぬと脅され、気持ちが不安定になりました
早速、エコー検査を行うと、写真の如く前立腺の堅い被膜(白点線)から直腸側に前立腺ガンの陰影が突出しています。触診でも、明らかに硬い前立腺ガンが突出していました。
前立腺ガンの明らかな悪化・進行・侵攻です。
この患者さんに、次のように説明しました。
❶初診時に前立腺ガンとお話ししました。
❷治療により前立腺ガンが激減したことは確認しましたね?
❸しかし、貴方は読んだ本の影響を受け、ガンの積極的な治療をしないで、自然経過を選択した。
❹治療を中止すれば、再発・悪化のリスクが高くなるのは、常識的に当然です。
❺現実、現在の貴方の前立腺ガンは大きくなり、前立腺の被膜を超えて、ステージⅡ→ステージⅢ以上に悪化しています。それがPSA値57です。
❻読んだ本の影響で「何もしない」と決めたのなら、男らしく自分の判断を貫きなさい。一度決めたことは貫きなさい!地元の医師の言葉くらいで動揺するな!
❼今後の治療は、するしないは別として、地元の医師と十分相談しなさい。
ある意味でドクハラ・ドクターハラスメントかもしれませんが、以上のようにアドバイスをしました。医師の示した治療を受ける受けないは患者さんの自由です。強制することはできません。自分で決めた事で、アドバイスを拒否した医師にかかるのは、医師を侮辱しに来たとしか思えません。
そして、言葉少なくお帰りになりました。自分の人生ですから、患者さんも私も自分の意志を貫き通すべきです。
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コメント
他、医療機関を受診するとよくわかります。
驚きと共に実感します。
私も高橋先生と意見の相違があり失意に打ちひしがれながら帰宅した事もありました。
「もう、来ない方が良い。」と、言われ
涙した事もありました。
しかし、目を閉じ耳を済まし集中して高橋先生の話を聞いていると言葉にされてない思いを強く感じる瞬間があります。
他、医療機関を受診すると本当によくわかります。
高橋先生ほど思いやりのある方を私は知りません。
だからこそ、紙一重の所から帰って来て下さったのだと思います。
人生は選択の連続です。
何を選択するかは自分次第。
私は私が厚かましく図々しい性分で良かったと思っています。
投稿: | 2018/12/01 09:37