« シモンズのマットレス | トップページ | 上海からの患者さん »

刺青の問題点

私は地元の中学校の校医をしています。毎年年に一回の学校保健委員会が開催されます。
校長、教頭、保健の先生、栄養士の先生、PTAの代表者、校医(内科医、眼科医、耳鼻科医、歯科医)、薬剤師が集い、生徒たちの健康のために委員会を開き議論するのです。

今回、私は内科校医として、下記のテーマでお話しをしました。格闘家の山本キッドさんが亡くなられたことが学生の間でも話題になり、刺青のせいで癌の精密検査が出来なかったという噂がたったのです。そして学生たちが刺青やタトゥーに興味を抱いたのです。

刺青(いれずみ)の問題点
Kidyam
先日、全身刺青で有名な格闘家の「山本キッド」さんが亡くなられたことが、若者の間で話題になりました。噂ではスキルス胃癌で亡くなられたそうですが、刺青が全身に入っていたために、MRIなどの精密検査ができなかったそうです。刺青の重金属がMRIの強い磁場に反応して火傷なのを作るからです。彼は寡黙なヒトでしたから、刺青で自己アピールしたかったのでしょう。
Justinbieber
ベトナム戦争中、アメリカ兵が自分たちの死亡した時の身元確認のために、手足に刺青を入れました。終戦後、戦争体験がトラウマになり、帰還兵の中に反戦運動が起こりました。音楽活動によって平和運動している帰還兵たちの姿で目立ったのが、手足の刺青でした。それを見ていた当時の若者たちが、その姿を見て平和運動=最先端の自己アピール=刺青が象徴と固定観念が成立し、「刺青が超カッコイイ!」となり、若者の間に刺青が流行ったのです。

江戸時代では、墨と水銀を混ぜて刺青に使用していました。水銀は発色が鮮やかになるので、昔の歌舞伎役者も顔料として水銀を使用していました。そのため、謎の病気(水銀中毒)で歌舞伎役者もヤクザも多くの人が亡くなりました。
現代の刺青のインクの成分は大きく分類すると
酸化鉄、メタル塩、プラスティック、植物成分
着色のための一般的な成分が重金属で、内容は次の通りです。
Metarucolour
体内にこれだけの重金属が、目に見える程残存している訳ですから、中毒症状を起こしても不思議ではありません。
水銀中毒、鉛中毒、カドミウム中毒などが、容易に思いつく副作用でしょう。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
水銀中毒: 神経障害、内分泌障害、腎障害、「水俣病」
鉛中毒:脳障害、肝障害、酵素阻害、貧血
カドミウム中毒:腎障害、腎不全、骨粗鬆症、筋肉痛、「イタイイタイ病」
アルミニウム中毒:脳障害、腎障害、「アルミニウム脳症」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
刺青を入れた人で、一番多い病気が肝炎・肝硬変です。
ある暴力団の幹部の話しによると、組の中で全身刺青ブームがありました。ところが、刺青を入れた多く数に肝硬変→肝癌が発症したため、親分は刺青禁止令を発したそうです。消毒が不十分で、使い捨てではない刺青の針で、B型肝炎・C型肝炎ウィルスが拡散したものと考えます。刺青師は、刺青の針に対して絵を描く筆のイメージで使用していますから、消毒するはずがありません。

古代の日本でも刺青の風習はありました。おそらくは、魔除けや祈祷師・支配者身分・自己主張の手段だったのでしょう。しかし、現代では自らの意志を表現する手段は、SNSを始めたくさんあります。自己アピールするために、身体に害する刺青を入れる必要はないでしょう。見方を変えれば、刺青を施しているヒトは、内向的で自分の意見が言えないということをアピールしているようにも思えます。見た目の外見やファッションとして刺青を入れるのは、若い内はよいですが、長い人生で将来後悔する事になります。
例えば、お子さんが生まれ一緒にプールや温泉に入ろうとする時に、多くの施設が入場を禁止します。また夏は刺青に熱がこもり、冬には氷のように冷えるのです。

Tatooskin
刺青の色素は、表皮の基底細胞の下の真皮に施されます。基底細胞より上の表皮では、基底細胞が細胞分裂して、最終的には垢として脱落してしまうからです。そのため、刺青の色素は一生涯真皮に残るのです。
刺青の治療では、面積が小さければ、その部分を切除して縫合すればよいのですが、面積が大きい場合には、何回にも分けて手術しなければなりません。
刺青の色素は重金属なので、生体からみれば、ある意味で毒素です。当然として、生体内の免疫システムが排除しよう働きます。しかし、微小ながらも鉱物の塊ですから排除がなかなかできません。すると、免疫システムが過剰反応することがあり、その結果、アレルギー反応、喘息、皮膚炎などを起します。
一次的な流行やファッションに惑わされて刺青を入れると、後々の人生に後悔を作ることになります。鮮やかな刺青が明るい人生を創るとは限りません。


|

« シモンズのマットレス | トップページ | 上海からの患者さん »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« シモンズのマットレス | トップページ | 上海からの患者さん »