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尿意の秘密

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膀胱や前立腺の数々の病気を調べ研究して治療するに当たって、基本的な概念を明らかにする必要があります。その対象が「尿意」です。
泌尿器科学会で名だたる先生たちが唱える、尿意のメカニズムは次のようです。
まずは、膀胱の基本的構造をイラストで示しました。膀胱粘膜があり、その下に粘膜下組織、平滑筋層、神経組織のC線維があります。
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①オシッコがたまり膀胱が膨らむと、当然、膀胱内圧が高まり膀胱粘膜が引き伸ばされます。
②すると、膀胱粘膜からATPやアセチルコリンなどのさまざまな「生物活性物質」が放出されます。
③それら生物活性物質が膀胱粘膜のすぐ下に存在するC線維を刺激して、それが脊髄神経回路に伝達されて尿意になるのです。
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もしも、この通りだとすると、説明できない現象がいくつかあります。
従来の尿意メカニズムの矛盾点
①残尿がないのに、残尿感が30分以上も続く
②尿がわずかなのに、尿意切迫感が止まらない
③急性膀胱炎の場合、頻尿は昼間のみ
④治療薬で膀胱平滑筋の緊張が緩んだから、膀胱内圧が下がる→膀胱内の尿量が一定の場合のみ
頻尿や尿意切迫感を抑えるβ3作動薬のベタニスや抗コリン剤のベシケア・ステーブラ・トビエースなどは、膀胱の平滑筋を緩める働きがあります。そのお陰で、頻尿や尿意切迫感の患者さんが、オシッコを我慢できるようになるのです。しかし、もしそうだとしたら、平滑筋が緩み、膀胱がさらに膨らみます。膀胱は内臓で一番下位に位置していますから、年中、内臓の重さを受けています。そのため、膀胱が膨らめば膨らむ程、内臓の圧力を大きく受けて膀胱内圧がさらに高まり、膀胱の粘膜はなお一層伸びて、生物活性物質が大量に放出される筈です、すると、頻尿の尿意切迫感が、もっと強くならなければなりません。したがって、名だたる先生たちのこの理論は、勘違い、間違いです。
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では、どのように考えればいいのでしようか?
ヒントは、β3作動薬や抗コリン剤が平滑筋にしか効かないことにあります。そして、平滑筋を緩める=尿意が低下する、の両方の点にあります。平滑筋細胞は、細胞間が電気結合=ギャップ結合で繋がっていて、1個の細胞の情報がすべての細胞に伝わります。つまり、1個の細胞の意識が、細胞全体の共通意識になるのです。膀胱が膨らむと、平滑筋は引き伸ばされて緊張(赤いギザギザ線)し、平滑筋全体に伝達されます。その緊張情報=膀胱内圧=尿意の情報が神経に伝達されて尿意になるのです。この仕組みは、ほぼ神経細胞と一緒です。神経は、点と線なので1次元ですが、平滑筋は立体的なので3次元です。膀胱平滑筋は、
❶収縮と弛緩する物理的な動力装置としての働きと、
❷機能的な感覚センサーとしての働きがあるのです。
実は平滑筋には他にも違う働きがいろいろあります。動脈壁の中膜にある平滑筋は、
❸動脈壁の内膜に溜まった悪玉コレステロールを食べて泡沫細胞になります。これはマクロファージ=貪食細胞と同じです。また、
❹動脈壁の内膜に集まった泡沫細胞を固めるために平滑筋がコラーゲンを作ります。これは線維芽細胞と同じです。この一連の流れが動脈硬化や心筋梗塞・狭心症の原因です。

以上のように平滑筋には、多彩な能力があるのです。その平滑筋には、私たちが知らない能力がまだまだあるのかもしれません。その未確認の能力が、原因不明の病気に関与しているかもしれません。そういう意味では、β3作動薬・抗コリン剤・α1ブロッカーは、動脈硬化わ防止したり、平滑筋の興奮を抑える実証済みの大豆イソフラボンが、さまざまな病気の予防に役立つ可能性があります。

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