« エンパス体質 | トップページ | 町田豊平名誉教授のご逝去 »

α1-ブロッカーの速効性の理由#2

M3umecha実は、尿道括約筋の他に、膀胱括約筋と言う排尿に深く関わる括約筋が存在します。さらに、尿管の延長線上にある膀胱三角部が尿道括約筋近くまで延びています。この2つの括約筋と膀胱三角部の協同作業が排尿メカニズムの本質なのです。
尿道括約筋は、人の意思で動く骨格筋=横紋筋です。膀胱括約筋は、人の意思とは無関係の自律神経支配の内臓筋=平滑筋です。人がオシッコをしようと力むと、
①尿道括約筋(赤い大勢のヒト型モデル)が収縮して引っ張りながら開きます。
②次に、自律神経を介して、オートマチックに膀胱括約筋(白い二人のヒト型モデル)が収縮して膀胱出口が開くのです。
③尿道括約筋に膀胱三角部が引っ張られます。
④そして、
(イ)腹筋
(ロ)内臓の重さ
(ハ)膀胱の収縮
(ニ)膀胱内のオシッコの重さ
で尿が流れ出るのです。
この3つの筋肉の動きと4つの圧力でオシッコが出るのです。膀胱の力がないから、オシッコが出ないという神経因性膀胱の単純な診断にとても疑問を感じますよね?

M3umecha2
筋力の強さは、尿道括約筋>>>膀胱括約筋です。何故ならば、尿道括約筋は骨格筋で、膀胱括約筋は内臓の筋肉だからです。横紋筋・骨格筋は「赤い筋肉」で、マグロと同じです。平滑筋・内臓筋は「白い筋肉」でタイやヒラメと同じです。マグロの方が長時間力強く動けますが、タイやヒラメは短時間の動きしかできません、この状態が長期間続くと、中年以降に内臓の筋肉である膀胱括約筋(青いヒト型モデル)は疲れ果てます。そのため、排尿の際に膀胱括約筋の収縮力が弱くなり、上記の排尿メカニズムがスムーズに作用しなくなります。その結果、膀胱出口が開かずに、膀胱三角部・尿道・前立腺が引っ張られて尿道側にペコッと凹むように狭くなります。それが、中年以降の排尿障害になります。
排尿障害と診断されると、
①前立腺が大きいと「前立腺肥大症」
②前立腺が小さいと「神経因性膀胱・慢性前立腺炎」
③ご婦人だと、やはり「神経因性膀胱」、不定愁訴が強い「過活動膀胱・間質性膀胱炎」
と誤診されるのです。膀胱出口が狭まるので、排尿障害の患者さんの膀胱出口から流出した尿はジェット流になるので、尿道口から出る尿は、分裂したり散ったりします。

M3umecha3
α1-ブロッカー(ハルナール・ユリーフ・フリバス)を服用すると、前立腺・尿道・膀胱三角部の平滑筋の緊張が緩むために硬さが取れ、膀胱出口にかかる尿道括約筋のけん引力が低下して、膀胱出口が凹んで狭くならなくなります。また、前立腺の硬い被膜が尿道括約筋によって引っ張られるので、膀胱出口が逆に開きやすくなります。その結果、膀胱出口が間接的にある程度開くので、排尿がスムーズに流れ出るのです。

しかし、前立腺肥大症で前立腺の組織密度がきわめて高いと、いくらα1-ブロッカーを使用しても、前立腺の硬さは取れません。そうなると、この排尿メカニズムだけでは、オシッコがスムーズに出ません。

オシッコという普通、ヒトが誰も意識もしない生理現象を当たり前だと思うので、いい加減な病態生理で病気を治療するのです。もっと、基本にかえって分析するべきです。そうすれば、誤診されて苦しむ患者さんが少なくなります。
人間の身体の基本構造(解剖学的・生理学的)を詳細に考慮することで、病気の本質が見えてきます。


|

« エンパス体質 | トップページ | 町田豊平名誉教授のご逝去 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« エンパス体質 | トップページ | 町田豊平名誉教授のご逝去 »