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たとえ話し

D32f40f1deda4959a38417cfde016482先日、「先生のたとえ話しのファンです。」と患者さんから告げられました。
そこで、私の「たとえ話し」をいくつかご紹介しましょう。

当院には、ガンを始め慢性前立腺炎、間質性膀胱炎、性行為感染症などのさまざまな病気を理解するために、下記のような説明をします。

①痛みの治療について
膀胱の痛みや陰部の痛みは、一般的な鎮痛剤では治りません。理由は、ケガや炎症などの本当の痛みではないからです。『例えば、失恋して胸が痛いヒトに鎮痛剤は効きませんよね。この痛みは、脊髄神経回路で合成された幻の痛みだからです。』この場合には、脊髄神経回路を抑えるトラムセットやリリカが有効なのです。

②舌の痛みや胃痛について
関連痛として、全身の至るところの症状が出ます。それについて納得できない患者さんはがおられます。膀胱・前立腺の脊髄中枢は、脳に情報を伝達するまでに長い道のりをリレーしていくのです。その際に、途中にある脊髄中枢を刺激してしまうのです。例えば、『セックスをした最後の絶頂期に陰部だけが感じるのではなく、全身に平常時にはない感覚を感じることがありますよね。それと同じです。』

③患者さんの個性と病気の性格について
治療していくうちに症状は軽減しますが、完ぺきにゼロになる患者さんばかりではありません。その理由は、患者さんの個性と病気の性格は酷似するのです。患者さんの病気は、患者さんの細胞の集合体である組織から成立ち、その情報は脊髄中枢を介して患者さんの脳に伝達します。患者さんの脳・脊髄中枢が病気の症状を合成するのですから、患者さんの個性が病気の性格に反映するのは当然です。『頑固な人は病気も頑固、シツコイ人は病気もシツコイ、変わった人は病気も変わった経過を取る。頑固な人なのに病気が素直である訳がない。私も頑固ですから、私の病気の慢性腎不全も頑固で治りません。』

④早朝のオシッコが出にくい理由について
下部尿路症の患者は、膀胱出口が一定以上開かないのです。健常者は、膀胱の尿が多ければ膀胱出口はさらに大きく開くのです。ところが、排尿障害のある患者さんは、膀胱にたまっている尿に関係なく膀胱出口は常に一定です。その結果、膀胱サイドからしてみれば膀胱出口が狭くなったと感じるのです。例えば、『映画館で上映中に非常ベルがなって客が一斉に非常口から出ようとします。その際に客の人数が10人位であれば、全員がすんなりと脱出できます。でも客の人数が300人以上であれば、非常口で人が将棋倒しで非常口がふさがれてしまい、ほとんどの人が脱出できなくなります。非常口が必要な時に大きく開けば、そんなことも起きないのです。』

⑤慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の複雑な症状について
排尿障害が隠れていると、陰部の痛みやカユミ、坐骨神経痛、胃痛などさまざまな症状が出ます。そのように説明しても、当該の患者さんは、納得できない表情を浮かべます。『火災が起きた際に、もし火災報知器が壊れていたら、貴方はどうやってこの状況を周囲の人間に知らせようとしますか?そこに太鼓があれば、ドンドンと叩くでしょう?スピーカーがあれば、大声で怒鳴るでしょう?でも、太鼓とスピーカーは、普通であれば、太鼓の音とスピーカーの音では火災を連想しませんよね?貴方の体も、排尿障害の直接の症状、頻尿や残尿感が十分にあなた自身に警告できないので、まったく異なる症状で貴方に警告しているのです。』

⑥癌と死について
前立腺ガンと、その疑いの患者さんがたくさん来院されます。前立腺ガンでは、他の癌と違い、平均寿命に達するヒトがほとんどです。でも「癌」と言う言葉の影響で、癌死について恐怖を持ってしまうのです。『では、貴方は何で死にたいのですか?人間は必ず死ぬのですよ。』「ポックリと死にたい……」『ポックリと死ぬためには、脳卒中・心筋梗塞にならなければなりません。そのためには、暴飲暴食、ストレスのある生活を送り、健康診断なんか受けてはダメです。』『癌はあらゆる臓器に発生するのです。前立腺ガンだけに固執するのは不十分です。』

⑦死の恐怖について
ヒトは、誰も永遠に生きることはできません。善いことをしてきたから、ポックリ死ぬ訳でもありません。『お釈迦さまは、食中毒で腹痛と下痢で苦しみながらお亡くなりになりました。名奉行の大岡越前守は、直腸ガンで出血と腸閉塞で苦しみながらお亡くなりになりました。キリストさま、無実の罪で十字架にはりつけになり槍で刺されて即死しました。この世界に多大の影響をもたらした高貴な人物でさえ、このような死に方です。凡人の私たちが、どのような死に方をしても不思議ではありません。』

⑧性行為感染症について
淋病などで排尿痛や膿が出て、困り果てて来院される男性患者さんが時々訪れます。
経過を聞き、診断をした時に、患者さんが「バチが当たってしまった......。」と後悔する人がいます。そんな時に『いい加減にしなさい。神さまが貴方だけを24時間365日年中観察して、遊んだぞ!バチを与えるぞ!と言って、貴方にバチを与えるとお思いですか?地球上の70億人の人間を神さまが常に監視していると思いますか?性行為感染症の病原菌は、生きるために、繁殖するために、人間の生活活動である性行為に一定の確率で介在しているだけです。』

病気の本質を納得して頂きたく、つい本音が出てしまい、感情的になってドクターハラスメント的フレーズを口にしますが、……勘弁してください。

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コメント

学生時代。極度のアトピー性皮膚炎の友人と、数十年ぶりにバッタリ逢いました。

声を掛けられた時 、誰か分からない位 アトピー性皮膚炎が改善されているのです。

本人曰く、
「アメリカで催眠療法を受けた。」

との事。

しかしながら、そんなに簡単な事ではなく。
長い時間を掛けて、治療したそうです。

「痒いと云う 自覚症状の深層心理 、奥深く入る。」

と言っていました。

アレルギーと催眠療法。

先生は どのような考えを お持ちでしょうか?
★回答
深層心理を更に奥へ進むと、前世が見えてくるのです。
前世に起きた様々な出来事が、現世の病気や精神に影響するとされています。
その前世の不快な出来事を理解して解決することで、現世の問題点が解消されると聞きました。

投稿: | 2018/06/09 01:57

たとえ話ファンの患者です。
処方いただいた失恋のお薬は、まだ飲まなくてもよい日が続いていますが、そのうち、手酷い失恋をするのではないかと、ドキドキしています。
今回、先生力作の①から⑧のたとえ話で、⑥の『ポックリ死ぬためには〜』を読んで、もう笑ってしまいました!ほんとに、そう思います!
まあ、死に方は選べないので運に任せるしかないとは思いますが。。。
これからは、可能な限り優しい人になって、病気の性格にも優しくなってもらいたいです。『優しい人は病気も優しい』を目指しますので、今暫く、診察に通わせていただきたく、どうぞよろしくおねがいいたします。

投稿: たとえ話ファン患者 | 2018/06/10 23:05

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