マスト細胞の再考②
マスト細胞を調べてみると、いろいろな生物活性物質を放出していらことが判明しています。
例えば、ヒスタミン、ヘパリン、プロスタグランジン、サイトカイン、ケモカイン、プロテアーゼなどです。
①ご存知のように、ヒスタミンは、アレルギー反応に強く関わっており、花粉症やアレルギーの治療に抗ヒスタミン剤が使用されます。
②ヘパリンは、血液の凝固を抑える作用があり、血液透析の回路に注入される薬剤です。
③プロスタグランジンは、血管に作用する成分で、プロスタグランジンが放出されないと血液循環が悪くなり、胃潰瘍になります。また、プロスタグランジンの種類によっては、痛み成分となり、痛み止めのクスリは総称して抗プロスタグランジン剤と呼ばれ、副作用で胃潰瘍になります。
④サイトカインは、あらゆる免疫反応に関わる指令伝達物質です。白血球、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、単球、血管平滑筋、粘膜平滑筋を誘引・活性化する作用があります。
⑤ケモカインは白血球を活性化する作用があります。
⑥プロテアーゼは、タンパク質分解酵素です。生体内のさまざまなタンパク質をペプタイドに分解します。
マスト細胞には、粘膜型と結合織型の2タイプがあり、周囲の環境に応じた形状・性格に変化します。つまり、「朱に交われば赤くなる」的なイメージです。マスト細胞は血液が供給される全ての組織に存在します。マスト細胞は血管及び血管周囲の環境に深く関わっています。これらの作用を完璧にコントロールするために、マスト細胞はさまざまなアンテナ・レーダー(受容体・レセプター)を使って、周囲の状況を観察して、アレルギーに関与するIgE抗体や異物対して素早く反応するのです。
これだけ沢山の生物活性物質を放出するマスト細胞は、ヒトの体でかなりの警備体制の主役です。
各組織のマスト細胞は、現場監督=小隊長であり、現地スタッフ=兵士たちを自由自在にコントロールするのです。
その部下=兵士たちとは、
①白血球②リンパ球③マクロファージ④樹状細胞⑤血管平滑筋⑥粘膜平滑筋⑦血小板⑧単球⑨抗体
などです。
マスト細胞の作用機序をイラストで示します。
例えば、手に傷を受けたとします。
怪我した状況をマスト細胞が直ぐに察知します。
そして、代表的なヒスタミンを放出します。
すると、マクロファージ(貪食細胞)が集合し、ばい菌や不良組織を食べ傷の周囲を清掃します。
マスト細胞は、状況を観察して、ヒスタミンの放出を止めます。
さらに細胞再生作用のある生物活性物質を放出して、皮膚の欠損部分を修復します。【参考資料】大学生物学の教科書、分子細胞学より
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以上の作用機序をモデルにして、さまざまな病気を作ります。
先に記した現地スタッフを利用して作られる病気は次に通りです。
⑴花粉症 ⑵アレルギー性鼻炎 ⑶喘息 ⑷慢性気管支炎 ⑸アトピー性皮膚炎 ⑹慢性副鼻腔炎 ⑺慢性中耳炎 ⑻アナフィラキシーショック ⑼胃潰瘍 ⑽十二指腸潰瘍 (11)インフルエンザ感染症 (12)細菌性腸炎 (13)細菌性肺炎 (14)過敏性腸症候群 (15)間質性膀胱炎 (16)慢性前立腺炎 (17)急性膀胱炎 (18)慢性膀胱炎 (19)痛風発作 (20)尿管結石疼痛発作 (21)胆嚢炎 (22)虫垂炎 (23)動脈硬化 (24)高血圧 (25)糖尿病性腎症 (26)歯周病
これらの病気のすべては良性疾患ですが、放置していては、なかなか治りません。病気によっては命に関わる病気でもあります。何故?なかなか治らないかと言えば、原因の的確な除去と、過剰な免疫反応に対して適切な抑制が必要だからです。その原因は、マスト細胞にひとたび火がつくと、なかなか鎮火しないからです。またマスト細胞の興奮を抑える薬剤もありません。そして、原因がウィルスや細菌ばかりではありません。炎症があると、原因は絶対にばい菌やウィルスだと思い込みが理由です。物理的な刺激や化学物質による刺激が原因であることもあります。
もしも、本当にばい菌・ウィルスが原因であれば、抗生剤・抗菌剤・抗ウィルス剤で鎮静化できますが、そうでない場合は、興奮を抑えることはできません。ヒスタミンが生物活性物質の主役でなければ、抗ヒスタミン薬を投与しても治りません。
一時的でも、マスト細胞を抑えることができれば、病気の方向性を容易に治癒方向へ向けることができるはずです。臨床経験から想像できる可能性のある薬剤として、ユリーフ、ハルナール、フリバス、ムコスタ、タガメット、フェブリク、セルニルトン、アボルブ、イリボー、ステロイド、一部の抗生剤・抗菌剤(ミノマイシン、クラビット)でしょう。
例えば、マスト細胞の細胞表面にアルファレセプター(アルファ受容体)が存在していて、ユリーフでブロックされ、活動が鎮静化されても不思議ではありません。それぞれの薬剤が、マスト細胞のさまざまなレセプター・受容体に影響を与えるのです。そして、それは人によって異なるので、どのクスリが効くかは、いろいろ試してみなければ分かりません。
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コメント
地元の泌尿器科医から、
「もう少し 痩せなさい。人間は直立して生きているから、内蔵の重さが 一番下にある、膀胱 前立腺に 圧迫されるから。」
と、云われました。
何故。 人間は 直立したのでしょうか?
【回答】
たくさんの獣の中で、直立歩行できる類人猿だけが唯一生き残り、自分たちの世界を作ったのです。
投稿: | 2018/05/12 01:26
お世話になっております。
病気に関して相談です。
今現在膀胱頚部硬化症の他に後鼻漏の症状に悩んでおり、先日大学病院で副鼻腔のctをとったのですが、画像を見た結果、副鼻腔内は綺麗で異常は見られないとの判断でした。自分の中では鼻の右側が炎症している感覚があり、ほぼ100%異常が見つかると思っていたのですが、この結果が出て驚いています。
異常が無かったため治療方法がわからず途方にくれています。
大学病院では画像をCDにして保存してくれており、希望の病院に送ってくださるとのことでした。ただ画像を見た限りではおそらく耳鼻科に行っても原因不明で処理されてしまうと言われました。
自分でもどうしたらいいかわからず途方にくれています。
耳鼻科関係の話なので専門外かもしれませんが、何かアドバイスいただけないでしょうか?
★回答
この世に原因の分からない病気は、たくさんあります。
東京都の難病指定疾患だけでも300疾患以上もあります。
病気の表面上の検査所見だけでは、本質が見えてこないこともあります。
今回のテーマのマスト細胞も、さまざまな病気の原因になっているかもしれません。
ですから、マスト細胞を介して、他の病気を治せるクスリが、他の病気を治せるかもしれません。
投稿: | 2018/05/15 18:07