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マスト細胞:肥満細胞の再考

2005年にマスト細胞について解説しました。
前回、フォシーガについて解説したところ、気がついたことがありました。ここにマスト細胞との関係があるかもしれません。
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糖尿病治療薬のフォシガーの副作用として、次の記載があります。

★主な副作用として、頻尿、口渇、性器感染、尿路感染などが報告されています。このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。

頻尿・尿路感染症の副作用の理由として、尿中に大量のブドウ糖が排泄されるので、細菌が増えて尿路感染症や頻尿になるとされています。しかし、通常の尿には細菌はほとんどいません。そして、糖尿病の患者さんの尿には普段からブドウ糖は多いのです。ですから、この理由には無理があります。

では何故に頻尿になるのでしょうか?フォシーガの抗ガン作用で解説したように、フォシーガにはガン細胞がコラーゲン線維に接着させない力があるのです。それからすると、細胞の間の接着に関与しているのかもしれません。
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Img_1098もう一つ興味あるクスリがあります。
★頻尿の治療で使用されるクスリとして、間質性膀胱炎の膀胱内注入治療で利用されているクスリにヘパリンがあります。注入した直後には膀胱の痛み出るので、膀胱の粘膜に直接作用することが想像できます。
ヘパリンの記述は次のようです。
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生体内において肝臓で生成される。ヘパリンは細胞表面に存在し、種々の細胞外マトリクスタンパク質と相互作用している。それらのタンパク質の中には、上記の抗凝固作用に関与する凝固系や線溶系のタンパク質の他に、種々の成長因子、脂質代謝関連タンパク質など100を超える種類のタンパク質が含まれ、細胞増殖や脂質代謝にも関与している。

さらに、詳細な記述があります。
肝細胞から発見されたため "heparin" と名付けられた(hepato- は「肝の」という意味)が、小腸、筋肉、肺、脾や肥満細胞など体内で幅広く存在する。化学的にはグリコサミノグリカンであるヘパラン硫酸の一種であり、β-D-グルクロン酸あるいは α-L-イズロン酸と D-グルコサミンが 1,4 結合により重合した高分子で、ヘパラン硫酸と比べて硫酸化の度合いが特に高いという特徴がある。この分子中に多数含まれる硫酸基が負に帯電しているため、種々の生理活性物質と相互作用する。

このヘパリンが頻尿を改善するとなると、理由が不明でした。

Img_1086
マスト細胞(肥満細胞)の数は、一人の人間の体に1兆個も存在します。人間は60兆個の細胞で成り立っていますから、全細胞の1/6がマスト細胞なのです。こんなに多いということは、さまざまな病気の原因になっているはずです。
Img_1087過去にも解説しましたが、マスト細胞には様々な能力があるのです。まるで日本軍の憲兵やナチスドイツのゲシュタポが様々な武器を持っているのと同じです。
マスト細胞が放出する生物活性物質は、分かっているだけで次のようなものがあります。
・ヒスタミン
・ヘパリン
・プロスタグランジン
・サイトカイン9種類
・ケモカイン
・プロテアーゼ

❶まず、フォシーガが頻尿という副作用を持っている理由を考えてみました。
マスト細胞は、細胞接着因子を放出する作用があります。もしかすると、フォシーガによって接着因子が破壊されたために、それに気づいたマスト細胞が活性化され、他の生物活性物質が放出されて頻尿になるのかもしれません。
❷次にヘパリンが、間質性膀胱炎の頻尿に効果がある理由です。
マスト細胞がヘパリンを放出するのは有名です。膀胱内にヘパリンを注入すると、膀胱粘膜にヘパリンがしみ込みます。それに気がついた膀胱粘膜に存在するマスト細胞が、『ヘパリンが多過ぎ‼︎』と判断して、それまで興奮・活発に活動していたのを休止するのかもしれません。
参考;一般的には異なる考え方です。
Img_1099
そこで、思いつくのが、胃潰瘍の治療薬であるムコスタです。
【ムコスタ】
胃粘膜プロスタグランジンE2増加作用や胃粘膜保護作用により胃粘膜傷害を抑制し、胃粘液量や胃粘膜
血流量の増加で血行動態の障害を改善し、炎症を抑え、胃粘膜を修復します。
通常、胃潰瘍の治療、急性胃炎や慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善に用いられます。

要するに、ムコスタには粘膜の安定化作用があるのです。保険適応病名にはありませんが、おそらくは胃粘膜に限らず、全ての粘膜の安定化作用を持っているのでしょう。安定した膀胱粘膜に気づいたマスト細胞が、それまでの興奮を抑えて、膀胱粘膜の過敏による頻尿・痛みが落ち着くかもしれません。
あくまでも、私の自由発想の仮説です。

【補足】Img_1104
❶胃潰瘍の治療薬であるタガメットにも、膀胱刺激症状がおさまる患者さんが存在する理由も、タガメットには粘膜安定化作用があるのでしょう。
❷動脈硬化の原因に、単球モノサイトと平滑筋の内皮への浸入があります。マスト細胞の放出する誘引物質が大きく関わっているのでしょう。この誘引物質を抑えることができれば、動脈硬化は軽減されるでしょう。
❸腎臓内の糸球体に顆粒細胞が存在します。これがマスト細胞と同じでしょう。腎不全の原因の腎硬化症や糖尿病腎症に関与しているかもしれません。
❹温泉に長期間入り続ける(3週間ほどの湯治)と病気が改善すると、昔から言われています。これは、温泉に含まれている硫化物質などの生物活性物質が皮膚からしみ込んで、皮下組織に存在するマスト細胞が反応するからでしょう。


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