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糖尿病治療薬のフォシーガに抗ガン作用

前回、フリバスの前立腺ガンのアポトーシス自滅作用の情報を得て解説しました。
他の一般薬でも、抗ガン作用ある薬が発見されました。それが、糖尿病の治療薬であるフォシーガです。
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フォシーガは、腎尿細管での糖質の再吸収を制御するナトリウム・グルコース共輸送体2(sodium-glucose cotransporter 2: SGLT2)に対する選択的・可逆的な阻害剤であり、血液中の過剰な糖質を尿と共に体外へ排出させ、血糖を低下させる薬剤です。
ところが、このフォシーガには確定されていなかった謎の作用があったのです。
大腸ガンの糖尿病の患者さんに、この糖尿病治療薬であるフォシーガを処方したところ、大腸ガンの腫瘍マーカーが激減したのです。
その記述が、下記です。
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症例は、糖尿病を合併した大腸がんで、原発巣を摘出後に肝、肺へ多発転移を来したが、化学療法も奏効せず、がん胎児性抗原(CEA)が上昇した。血糖コントロール目的でダパグリフロジン(フォシーガ)5mg/日をセツキシマブ(商品名アービタックス:モノクローナル抗体の抗ガン剤)投与下に併用投与したところ、CEAは1,104ng/mLから85.8ng/mLに減少、CT像では肝と肺の多発転移が縮小していた。しかし、ダパグリフロジン(フォシーガ)の投与を休止しセツキシマブの単独投与になるとCEAの再上昇、CT像での再燃が確認された。
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フォシーガの抗ガン作用は、次の記述に示してあります。
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試験管の実験では、フォシーガの濃度依存性に培養液中の浮遊細胞数が増加しており、細胞接着能を阻害し、がん細胞を接着面から遊離させることで死滅させると考えられる。  
具体的には、コラーゲン1と4に対するがん細胞の接着能を阻害していることが分かった。フォシーガの添加により、コラーゲン1と4に対するがん細胞側の受容体であるdiscoidin domain receptor(DDR)の発現量も低下していた。  
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つまり、フォシーガのメインの糖尿病治療の作用ではなく、いい意味での副作用が、ガン細胞のコラーゲン線維に接着する機能を阻止して、ガン細胞が一定の場所に落ちついて食事ができないので死滅するのでしょう。

この報告は、大腸ガンのステージ4患者さんの著好例です。他のガン細胞に効果があるかどうかの記述はありませんでした。前立腺ガンの報告もありませんが、前立腺ガンの患者さんの併用薬として採用してもよいでしょう。少しでも、抗ガン作用のあるクスリは試したいものです。前立腺ガンの患者さんからのご希望があれば、処方します。

フォシガーには他にも副作用があります。それに関しては次回に。

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コメント

以前糖尿病のことで相談させて頂きました。連休明けに血糖血液検査いきました。一つは慢性前立腺炎でザルティアと水分制限していますが多血症と言われて水分をとるように言われました また空腹血糖138 ヘモグロビンはまだ6,7 たんぱく尿と尿糖が微量の+でした あと慢性腎臓病の初期と言われて どうにも腎臓を守るために水分をとるように言われました 42歳ですし水分を今より取る必要を優先したほうがいいでしょうか?
★回答
水分をたくさん取ったから、多血症や腎臓が治る訳ではありませんが、試してみるのもいいでしょう。

投稿: 薩摩隼人 | 2018/05/07 10:35

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