前立腺針生検の精度
針生検の言葉はよく耳にされるかと思いますが、ほとんどの人がその道具を見られたことはないと思います。
この写真が針生検の針です。二重構造になっていて、内刀と外刀に分かれています。先ず先端の部分を前立腺にチョッとだけ刺します。スイッチを入れると、内刀が2センチ程前立腺の中に刺入します。次に時間差で外側の外刀部分が刺入します。その時に内刀の凹み部分にハマった前立腺組織を外刀が削り取って針の中に納めるのです。
この写真は、PSA値6.57の62歳男性の患者さんです。
矢印の部分が前立腺ガンです。前立腺尖部に小さな組織の塊りが確認できます。
厚さは最大で2.7㎜しかありません。
この写真は、PSA値11.9の56歳男性の患者さんです。
矢印が前立腺ガンです。前立腺右側に小さな組織の塊りが確認できます。
厚さは最大で4.6㎜しかありません。
この2人の針生検をする際に、この写真のイメージを頭に入れながら針生検をしなければ、ガン組織を採取することが出来ません。なぜなら、針生検の際に、先端の部分を前立腺組織に5ミリ程刺します。そしてスイッチを入れて、時間差で内刀→外刀の順で針がスライドします。ここに、盲点があるのです。前立腺組織に5ミリ刺した時点で、この2人のガン組織を貫通してしまいます。その後、ガン組織を超えて正常部分の組織を採取しても全く意味がありません。
イラストのように大雑把に針生検するのでは、10本〜20本刺しても、前立腺ガン組織を見つけることが出来ません。前立腺ガンは、主に外腺にできるのに、当てずっぽうで前立腺の中心組織を狙って刺している医師が多いのです。事前に組織の位置と深さを念頭に針生検をしなければなりません。このような場合、始めの針先端の刺入時に1ミリ位のチョッとだけ刺すようにすれば、ガン組織を採取することが出来ます。本当にサジ加減です。PSA高値だからと言って、触診もエコー検査もしないで針生検した場合は、前立腺ガン組織を傷付け刺激するだけで放置してしまいます。傷付けたガン細胞が、ジッと沈黙を貫くとは思えません。もっと頭をフルに使って繊細に検査すべきです。
今回のテーマは、ある製薬会社のMRさんとの会話の中で思いつきました。
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