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慢性前立腺炎で悩む総排泄腔外反症の患者さん

前回お話ししたように、総排泄腔外反症の二十代の患者さんが来院されました。

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総排泄腔は、胎児の成長過程で認められる臓器です。成長とともに中央にくびれが生じ、最終的には2つに分離します。分離した前が膀胱で、後ろが直腸になります。しかし、その成長過程で、分離しないことが起きます。総排泄腔として存続するのです。それが総排泄腔外反症です。
総排泄腔は、次のように成長分化します。
総排泄腔(前)→膀胱➕尿道➕会陰部➕下腹部皮膚
総排泄腔(後ろ)→直腸➕回盲部➕肛門

Sohaisetu総排泄腔が成長・分化しないと、これらの組織が不完全になります。総排泄腔外反症の患者さんは、出産直後は、おヘソはヘルニア、下腹部からは膀胱の内側が露出しています。小腸と大腸が同じ面に顔を出していますから、総排泄腔は回盲部と直腸になることが想像できます。それぞれ回盲部と直腸手前で寸断されていると考えられます。尿は下腹部から直接滲み出て来ますし、当然に小腸の内容物も回盲部がなく大腸と繋がっていないので下腹部から出て来ます。

この患者さんは、小腸と大腸を接続して、人工肛門を作成しました。総排泄腔を膀胱として作り、下腹部の大きな穴は塞ぎました。膀胱の容量が少ないということで、膀胱に小腸と胃の一部を継ぎ足しました。
現在は、下腹部に小さな穴が開いており、一定時間ごとにカテーテルを挿入して排尿しています。尿意は感じるので、主治医からラッキーだったと言われたそうです。

この患者さんの悩みは、手足が痺れる、頭がクラクラして、ものが覚えられないとの事です。子供の頃は記憶力がとても良かったにも関わらず、高校生になってから次第に低下したように感じているそうです。私の掲載した慢性前立腺炎の症状に近いので、意を決して来院しました。

エコー検査で膀胱を観察すると、膀胱の形状はヒョウタン型です。膀胱に小腸と胃を接続したからの形状でしょう。膀胱三角部と前立腺はエコー検査では確認できませんでした。膀胱は左右が分離していて、その間に直腸になる筈であった総排泄腔の後壁が挟まっています。そのため、膀胱三角部は2つに分離しています。しかし、総排泄腔の壁は厚くなっていて、膀胱三角部が過敏になっているだろうと連想できます。
左右に開いた膀胱を正面で閉じると膀胱三角部は膀胱の前壁に位置することになります。ところが、本来の膀胱三角部は、膀胱の後壁・背部に位置します。すると、座ったり立っている時の膀胱内圧は膀胱前部にかかるので、よっぽど尿が溜まらないと膀胱三角部に負担が掛かりませんから尿意は直ぐには出ません。
しかし、総排泄腔外反症の治療後は、膀胱三角部が膀胱の前に位置しますから、膀胱内圧は常にかかることになります。結果、常に尿意が感じる筈です。もしも、その尿意がそれほど感じられていないとすれば、その尿意情報は何処へ消えていったのでしょう。それが患者さんの訴える不定愁訴になっているのかもしれません。

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