PSA値3600超えの患者さん
平成27年6月、今から約3年前に初診で来院した患者さんのエピソードです。
ある日のこと急に肋骨が痛くなり、地元で血液検査すると、PSA値が何と3605のとても高い値でした。この値から考えれば、肋骨の痛みはどう考えても骨転移のためでしょう。その時点で前立腺癌ステージⅣです。しかし、患者さんは、前医で強く勧められた針生検を拒否して当院に受診しました。
このような状況では、一般の泌尿器科の医師は「針生検をしないのであれば、治療できません!責任が持てないから、もう来ないでください!」と冷たく診療を拒否するのです。しかし、我々医師は、病気で悩み苦しんでいる患者さんを救って上げるのが使命です。にも関わらず、患者さんの思いを無視して拒否する医師の多いこと多い事。何のために医師になったんだ!?と言いたい。医師は自分の方針に従わない患者さんに対して怒るのです。(……私もたま〜にありますが……反省点です……)完璧に上から目線、強者と弱者の関係を維持しようとするのです。人生は人それぞれ十人十色です。ヒトを自分たちの治療方針のワンパターンの型にはめるのは如何なものでしょうか?もっと、柔軟に対応すべきです。
初診の際の前立腺触診では、前立腺は肥大症の如く大きく全体が前立腺癌の硬さです。エコー検査では、前立腺の大きさは128cc(正常20cc)と非常に大きい所見です。膀胱には肉柱形成を認め、過去から排尿障害が強かったと思われます。また、前立腺癌のステージⅡ・Ⅲのように癌が局所に限局していません。前立腺下部全体に癌が見えるようでした。(赤い矢印)
患者さんの希望を叶えるために、私は針生検をせずに治療を開始しました。
エストラサイト1カプセルを週1回の低用量治療です。エストラサイト(エストラムスチン)は、エストラジオール(女性ホルモン)+ナイトロジェンマスタード(毒ガスの成分)の合剤です。本来ならば毎日4カプセル服用ですから、私が使用するのは、たった1/28の少量です。それでも前立腺癌にとっては初めて遭遇する治療薬なので効果が出ます。それでいて少量なので副作用がほとんど出ません。
途中経過で前立腺の大きさは75ccまで小さくなり、触診でも前立腺の硬さは軟らかくなり、前立腺肥大症の硬さまでになりました。患者さんの体重も少し増加し健常時に戻りました。排尿障害の症状である尿意切迫感があるので、エストラサイトの他に前立腺肥大症の治療薬でもあるプロスタールを併用しました。
2年8カ月経過した平成30年2月に元気に来院しました。エコー検査で前立腺の大きさは36ccと初診時の3分の1以下になりました。しかし、前立腺の中に癌の陰影が不明瞭ですが確認できました。(緑の矢印)前立腺の大きさから考えて、癌の体積も3分の1以下です。
患者さんは、ポジティブな方で、毎年夏季には北海道で2カ月間ロッジ風の一戸建てを40万円(2カ月分)で借りて、夏を涼しく過ごしていました。毎年そのお話をお聞きし羨ましく思っていました。
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コメント
ベタニスの 長期服用で、前立腺が縮小しますか?
地元の泌尿器科医は アボルブよりも ベタニスを勧めてきます。
前立腺の大きさは、30cc程で 残尿は15ccだそうです。
「アボルブでは 痛みは取れないよ。」
「難しく考えなくてもいいよ。」
と言っていました。
いかがでしょうか?
【回答】
ベタニスは毎日10錠くらい服用すれば、前立腺も縮小するかも知れません。
ベタニスもアボルブも痛みに対して、どちらも効果はあります。
投稿: | 2018/02/24 01:15