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病気を診ずして、病人を診よ!

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この言葉は、慈恵医大の創立者である高木兼寛先生が唱えた大学のキャッチフレーズ・モットーです。
高木兼寛先生は晩年に海軍軍医総督(少将の階級)になったとても偉い人物です。イギリス医学の影響を受けて、ドイツ医学の様に学問的に病気を観るのではなく、病気で苦しむ目の前の患者を診る事に重点を置きました。

F5022428a2734fb68a5edd9239d6f959ドイツ医学では、患者さんの所見から、すでに用意している病名に適合するかどうかを当てはめて診断するのです。しかし、用意している病名に患者さんの所見が見当たらなければ、患者の病気は「気のせい」と診断するのです。
イギリス医学では、患者さん訴える症状は、常に正しいと考えます。そして、患者さんの訴える症状の発症する理由を徹底的に考えて、診断し治療するのです。患者さんの訴える症状と検査所見との整合性を考え診断・治療するベきです。

私の母校の病院で診断された患者さんが治らずに困って、当院に来院する患者さんが時々見受けられます。最近の母校の若い医師は、私の時代よりもK大学、T大学レベルの遥かに偏差値が高く変身してしまった母校に合格したI.Qの高い人たちばかりです。このような方々は、問題に直面するとその答えを間髪入れずに直ぐに見えてしまうのです。まるで、目的地が決まった高速道路に特化した脳のようになるのです。高速道路ばかり走行するので、「わき道・回り道」を知らないのです。わき道に正解がある場合もたくさんあるのです。I.Qの高い人は、わき道はだんだん消滅して、何も考えずに高速道路だけのワンパターン的な考え方をし、イギリス医学ではなく、ドイツ流医学になってしまうので、高木兼寛先生の作った大学モットーを実現してくれないのです。私の時代の人間は、I.Qが少し高く、その分、I.Qの遥かに高い人よりも努力した人が多かったので、高速道路はもちろんのこと、余分なことを考える「わき道」もたくさん存在するのです。神童と言われる天才肌ではなく、煩悩に悩みながらもコツコツと考える秀才肌です。制限のない自由な発想が出来るのです。慈恵医大病院で満足できなかった患者さんには、深くお詫び申し上げます。

Moto2これには、受験勉強で鍛えた考え方が根底にあります。事前に覚えたたくさんの知識と公式を使って、目の前の問題に当てはめる作業の繰り返しです。それを小学生から大学生になるまで繰り返すのです。特に大学の医学部は、記憶しなければならない知識が山の様に多く、この繰り返しの作業に特化するのです。結果、応用の訓練がされていません。この工程で出来上がった医師は、どんな風になるか自然と想像できるでしょう?患者さんを目の前にして、予め知っている病名を当てはめる、単なる試験問題としてしか患者さんを見なくなるのです。

Moto手持ちの知っている病名を当てはめるだけではなく、患者さんの背景に存在する病気の原因を発見しようと尽力しなければなりません。病名だけではなく、今まで蓄えた知識、生物学・物理学・化学・解剖学・生理学・気象学・地学・歴史・民俗学・体験などをフル稼動させて、わき道まで覗き込んで、患者さんの訴える症状と得られた検査結果の整合性を図り、必要ならば特異性の高い検査を行い、患者さんの裏に隠れている病気の原因に的を絞って見つける努力をするのです。

2b161682b7b44542896b092bc5897764今話題のAIによる診断システムは、ドイツ流医学の病名当てはめ手順から恐らく作られるのでしょう。結果、I.Qの高い医師と変わらないので、誤診される患者さんが増え続けるでしょう。AIのソフトウエアを作成する際に、効率に重きを置くと、医学の将来は暗いと思われます。

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