謎の腹痛
近所の風邪で何度か診察したことのある若い男性が、腹痛で来院しました。
お腹のどこが痛い訳でもないのです。お腹の全体が何となく痛いのです。すると、以前にも七転八倒の腹痛で、救急で地元の大学病院に入院したそうです。しかし、胃カメラ・エコー検査・CT検査など精密検査の結果、原因が不明でした。また今回も痛くなったのです。
取り敢えず、一般的な腹痛(急性胃炎・虫垂炎・急性腸炎・胆石症・急性膵炎)に適合するお薬を処方しました。処方箋を待っている間に患者さんが、突然に腹痛が強くなって、待合室で七転八倒の状態で、待合室の床に転げ回っているのです。どこが痛いのかも分からない状態です。直ぐに、ブスコパンという鎮痙剤を注射しました。しかし、苦しみは治りません。さらに、過換気症候群状態になり、手がしびれてきたと訴えました。
そこで、以前入院したことのある大学病院に電話して、緊急受診の承諾を得ました。ご家族にも連絡が取れ、駆けつけていただきました。救急車を呼び大学病院へ搬送しました。
後日、お母様が来院され、ご子息の経過を報告されました。今回の大学病院でも腹痛の原因が結局分からなかったそうです。そこで、病院を変えて、地元の基幹病院で精密検査を実施しました。原因が分かり胆石症だったのです。おそらく、エコー検査でも分からない微小の胆石が胆管に詰まり、疝痛発作になったのでしょう。通常は、右上腹部痛と右背部痛なのですが、人によっては、痛みが局在せずに、お腹全体が痛くなることもあります。今から考えてみれば、疝痛発作と無症状の落差が極端なのは、尿管結石か胆管結石しかありません。診断できなかった自分が、救急医療に携わっていた医師として不甲斐ないと感じた瞬間でした。
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