膀胱の白斑症
膀胱炎を繰り返す患者さんはかなりの数いらっしゃいます。その中で、膀胱鏡検査を受けている患者さんがおられます。認められる所見で多いのが、「白斑症」です。膀胱の粘膜に白い苔のようなものが確認されます。白斑症は原因不明とされています。
この写真は、30代のご婦人の手術直前の膀胱鏡の所見です。膀胱出口から膀胱内を観察している所見です。
粘膜に白く苔のように見えるのが、白斑症です。その姿はいびつで、まるでゴジラのように見えます。この白い苔の付着している場所が、膀胱のセンサーである膀胱三角部です。
この患者さんは、散々抗生剤を服用して、尿はキレイだから、心因性頻尿と診断された患者さんです。
この写真は、41歳のご婦人の膀胱鏡の所見です。膀胱粘膜にサンゴ礁のように見えるのが、白斑症です。膀胱出口から、膀胱三角部に渡って広く白斑が広がっています。
この患者さんも、何回も繰り返す慢性膀胱炎で苦しまれていました。
この患者さんのエコー検査所見です。膀胱三角部の粘膜が白く見えます。それが、白斑です。
また、膀胱括約筋の方向が偏位して、膀胱三角部が厚くなっています。
上記の写真は全て、内視鏡手術の際に撮影したものです。どちらの方も、治らない膀胱炎、繰り返す膀胱炎で苦しんでいた患者さんです。全て、膀胱頚部硬化症によって膀胱三角部が興奮している患者さんです。手術により膀胱三角部を電気蒸散手術で症状は、改善しました。
この手術法を考案するキッカケは、私のボスであった東京医大名誉教授の三木誠先生の一言でした。
私が研修医の終えた若造の頃、三木先生が慈恵医大の助教授の頃です。ある患者さんの膀胱鏡検査の際に白斑症を指摘されました。その際に、「あの白斑を切除すれば、症状は取れる人がいる」と一言おっしゃったのです。それ以来、『何故?何故?何故?』と、ズ〜ッと思うようになりました。白斑は粘膜の変性病変でしかありません。
開業医になってから、難治生の膀胱炎の患者さんをたくさん診てきました。治療の試行錯誤する内に、膀胱三角部の重要性が分かり、私の治療の道が開けてきました。膀胱三角部を切除あるいは蒸散することで、症状が軽快するのです。白斑を切除する行為は、実は膀胱三角部を切除することと同じだったのです。後日、その事を三木先生にお話しすると、「そんな事言ったけ?」と言われてしまいました。チョッと悲しかったです……。
白斑症は、排尿障害によって生じる、膀胱粘膜の変性症です。白斑症が病気を作っている訳ではなく、粘膜下の膀胱三角部が肥厚し興奮しているのです。膀胱三角部を蒸散手術しても、膀胱出口が開放しなければ、病気は治りません。
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