触診のテクニック
前立腺ガンの昔から存在する診断法が、直腸を介しての前立腺の触診です。
でも、最近の若い泌尿器科医師は、PSA値が高い患者さんに対して触診を省いて、MRI検査を実施したり、中には即、針生検を行う輩までいます。
理由は、触れて分からなければ、針生検すれば分かるのだからと考えて、無駄な検査はしないと言うのです。何でもかんでも『効率!効率!』と言う若者の意識が成せる現象です。医師の都合による、その効率のために、ステージⅠの前立腺ガンが発見され、『ど〜だ、それ見た事か!』と言わんばかりの態度で患者さんに説明するのです。発見された患者さんは堪ったものでありません。まして悪性度が少なければ、「様子を見ましょう」と無責任な言葉を発するのです。患者さんにしてみれば、散々心配させておいて『何だ!その言い草は!』という気持ちになります。
医師サイドは、『悪性度を確認する必要があるから仕方がないだろう!』という気持ちです。しかし、それは医師の勉強不足です。5年生存率は、悪性度に関係なくステージに依存しているのです。
逆に針生検することで、悪性度の高い前立腺ガンは一気に悪性度が増して、5年生存率が30%まで落ちるのです。ラテント癌の静かにしている悪性度の高い癌細胞と、顕在ガンのそれとでは、病理検査で区別ができないのです。
つまり、触診やエコー検査で分からない前立腺ガンは、針生検してはいけないのです。ですから、
医師は手を抜かず丁寧に診ろ❗️
触診は必ず行なえ❗️
患者さんを苦しめるな❗️
さて、ここで前立腺触診・エコー検査のテクニックを伝授しましょう。
❶患者さんを横向きか、上向きか、うつ伏せでお尻を突き出してもらいます。私は上向きで診察します。
❷ゴム手袋にワセリンを塗って、肛門に痛がらないようにそ〜と人差し指を挿入します。
❸人差し指で前立腺をソフトに触診します。
❹石のように硬い硬結が触れたら、悪性度の高い前立腺ガンです。表面が凸凹していれば、ステージⅢ〜Ⅳの癌と考えます。
❺硬結が前立腺肥大症の様な硬さの場合は、本当の前立腺肥大症と区別するために、前立腺の左右を触れます。左右が同じであれば前立腺肥大症です。左右が異なれば前立腺ガンです。前立腺肥大症は内腺から成長しますから、外腺は圧迫潰れ萎縮し無くなるのです。その結果、左右対称の前立腺肥大症になります。
❻硬結がなく、シワの様だったり、わずかな出っ張りだった場合には、エコー検査を利用して透過度を観察します。もしも白ければ傷か炎症の瘢痕です。黒ければ癌です。
❼前立腺ガンのほとんどが、直腸に面した外腺にできます。エコー検査ででは、直腸側の前立腺外腺に注目します。
❽エコー所見では、前立腺ガンの境界線が明瞭であれば、発育速度が遅く周囲の癌細胞が揃って増えていると見なし、悪性度が低い(グリソンスコア7以下)考えられます。
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コメント
丁度触診の事にふれて頂いたので、疑問に思っていた事で先生に質問があります。
だいぶ前に本かインターネットの情報で、前立腺マッサージを続けると頻尿が良くなるみたいな事を知ったのですが、触診と前立腺マッサージは若干違うと思いますが、先生の経験上そういった事はありましたか?
病院で何の為に前立腺マッサージをするのか、患者さんにどのようなメリットがあるのでしょうか?
教えて頂けると幸いです。
【回答】
前立腺マッサージは、前立腺を8の字に強くしごく操作です。
慢性前立腺炎で前立腺内に膿が溜まっているから押し出すイメージです。
しかし、慢性前立腺炎の人には膿も菌もいませんから、意味のない治療法です。
投稿: | 2017/12/05 16:49
先生、回答ありがとうございました。
何となくイメージつかめました。
変に余計な事はしないで服薬でこの調子を維持していきたいと思います。
投稿: | 2017/12/05 21:09
先月先生に触診していただいた際に、しわのような物があるが硬核はありませんとおっしゃっていました。
エコー検査では私はどの程度のガンなのでしょうか。
明日月に一度の診察なので先生のアドバイスをお願いします。
【回答】
超音波エコー検査では、癌の所見はありません。
治療により、癌の体積がなくなったのか、ステージ1だったのでしょう。
また、治療により前立腺の体積が縮めば、周囲にしわが寄っても不思議ではありません。
さらに、前立腺針生検による傷跡のしわかもしれません。
投稿: 京都在住 | 2017/12/06 08:51
早速のご回答ありがとうございました。
いつも先生のお言葉には感謝しています。
私も微力ながら先生の状態を全力で感知していきたいと思っております。
投稿: 京都在住 | 2017/12/06 09:33