透析仲間の症状
透析クリニックで、同じ時間に透析する患者さんが20人近くもいます。
ロッカーで同じ時間に着替える人も何人かいます。挨拶をしますが、無愛想に返事する人も、また無視する人もいます。病気が病気だけに皆んな暗〜いのです。その中で、会話を交えるご高齢の方がいます。何回か会話を交わしている際に、私が泌尿器科医師であることを告げました。
その方は、腎不全以外にも病気があって、慈恵医大の関連病院の東急病院で治療していたので、慈恵医大出身の私に親近感を覚えたらしいのです。先日、1年前から両鼠径部と肛門がとても痒くて治らないと訴えたのです。透析患者さんが皮膚が痒くなることはよくある事です。ステロイド軟膏やゲンタシン軟膏を塗ってはいるが、全然変わらないのです。そこで、「排尿に関係なく、前立腺の病気があっても痒みが出ますよ。」と告げると、診てもらいたいと言って別れました。以前にも慢性腎不全でオシッコが一滴も出ない患者さんで頻尿を訴える方がいました。この男性も同じでしょう。
その翌日、私の通っている透析クリニックの主治医が書いた紹介状を持って、その方が来院しました。ビックリです。お話しをお聞きし、まずはエコー検査を実施しました。「!!!」2度目のビックリです。何と膀胱に尿がパンパンに溜まっているのです。エコー所見の黒いスペースの部分です。慢性腎不全で尿が出ないはずなのに尿が溜まっているのです。そう、まるで尿閉状態です。
早速カテーテルを挿入して膀胱内の尿を排出しました。全部で何と750ml以上で、採取した尿は写真のように、まるでカフェオーレのようです。濃縮した白血球がタップリ含まれた、いわゆる膿尿=腐った尿で向こう側が見えません。随分前(恐らく1年位前から?)から膀胱内に同じ尿が溜まっていたと考えられます。
前立腺のエコー所見では、前立腺の中葉部分が突出しており、膀胱の敏感な膀胱三角部を常時圧迫しています。しかし、頻尿がないので、その代わり下半身の痒み症状になったのでしょう。
喜ばしい事が起きました。膀胱内の尿を全部排出したら、何と痒みが全て消失したのです。3度目のビックリです。
この現象は、原因は前立腺肥大症ですが、慢性前立腺炎症状です。
この患者さんから帰り際に言われた言葉が、……
「先生は、透析クリニックでお会いする時は、ショボくれて元気がないけれど、診療中は人が変わったみたいに活発で元気ですね?」「医師とはいえ私も病人ですから、趣味同然の診療中は、水を得た魚の様に元気ですよ。」と答えました。
『……そうなんだ、……私は診療している時だけが元気で居られるんだ!』と心の中で思いました。
透析クリニックの私の主治医が、私の報告書をお読みになってビックリの感想でした。
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コメント
「僕が死んだってたかだか一人の人間がいなくなるだけの事じゃない?
そんなのどうって事ないよ。」
先生、私も来年50になります。
ぐっとぐっと死を考えるようになりました。
私の生命保険はいくらのに入っていたっけ?
とか
子ども達にいくら残してあげられるかな?
とか
夫が再婚する時は応援してあげて欲しい
とか
いろいろ、いろいろ考えています。
先生、残念ながら人にはこの世での使命というのがあって
その役割は人によって全然違っていて
私のようにただ生きているだけの人もいれば
先生のように重責を担っていらっしゃる方もおられる。
その宿命は仕方のない事。
先生はきっと、あの世では楽に生きられるお方なのでしょう。
先生どうか、どうか長生きされて下さいね。
投稿: | 2017/11/04 11:28