ステージⅣの前立腺癌患者さん
今回ご紹介するのは、平成26年3月に来院した60歳の患者さんです。(#31455)
平成25年8月に、地元でPSA検査を実施したところPSA値が何と702!でした。
早速、大病院で前立腺針生検を含め精密検査した結果、グリソンスコア4+4=8と低分化型の悪性度が高い前立腺癌が見つかり、しかも骨転移(両側鎖骨・背骨・左大腿骨)まで病気は進行していました。いわゆるステージⅣです。
平成25年9月には、治療を開始しました。ゴナックス注射、カソデックス内服を続けました。その甲斐あって、鎖骨と背骨の転移は消失しましたが、大腿骨は残ったので放射線治療を追加して、効果が出て消失しました。そして、セカンドオピニオンで平成26年3月に当院を受診したのです。
当時は、治療を開始して半年位で、状態も落ち着いていたので、このまま治療を続けるのが最良でしょうと回答しました。
あれから、4年8ヵ月経った本日に、再び64歳になった患者さんが来院されました。外見からは、とても元気そうで、4年以上経過した前立腺癌のステージⅣの患者さんとは思えません。
現在の患者さんの悩みは、平成27年11月からPSA値1.0以下であったのが、今年平成29年9月からPSA値が1.0を越え、1.66~1.347に上昇し、主治医から再度放射線治療をやりましょうと強要されているとのこと。そこで、今後の治療について相談されました。
まず驚くべきことは、前立腺癌ステージⅣの5年生存率は、この表で示すように43.6%です。56%以上の確率でお亡くなりになっているのです。それからすると、目の前の患者さんは、まだまだ元気で(私よりも元気!)、あと5年以上は生きれるでしょう。
この患者さんが一番心配しているのが、ホルモン抵抗性前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌CRPC)です。
前立腺癌は、男性ホルモンであるテストステロンによって活性化します。
この患者さんの治療法のように、ゴナックスはテストステロンが作れないようにし、カソデックスはテストステロンレセプターを完全ブロックします。そうすることで、テストステロンが癌細胞内に侵入し、核を刺激して活発になるのを防ぎます。
しかし、ホルモン治療を続けていると、隠れていた生き残った既存の前立腺癌が悪化し、男性ホルモンを遮断されても癌細胞内で自ら男性ホルモンを造れるようになるのです。
ホルモン抵抗性前立腺ガンの予防として、癌細胞の中まで効果のあるイクスタンジを毎週1回〜2回少量服用することを提案しました。イクスタンジであれば、細胞膜のレセプターとレセプターから細胞への浸入経路と細胞内の男性ホルモンが核内に浸入もブロックしてくれるのです。その結果、細胞内で男性ホルモンが造られてもブロックされるので、変身途中の前立腺ガンを押さえ込んでくれます。
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