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薬の可能性と応用

6f6260af847c42b7b82863719bf6cf90❶正露丸
下痢止めで有名なラッパのマーク…のあれです。
薬は、腸管の平滑筋の興奮を抑える作用で腸管の過剰な蠕動運動が静止するのです。
この平滑筋の作用を膀胱・前立腺に利用するのです。頻尿で苦しんでいる患者さんに効果がありました。

❷タガメット
昔からある潰瘍治療剤です。アメリカの医学書のカレント・メディカルのイボの治療薬として勧められました。免疫力を活性化できる薬です。実際にイボやタコの患者さんに処方すると、確実に効果が得られます。現在、前立腺癌の患者さんに処方しています。

❸ユリーフ
男性の前立腺肥大症の治療薬です。前立腺や膀胱の平滑筋の緊張をブロックして、排尿障害を改善します。前立腺のないご婦人の排尿障害にも効果が出ます。慢性膀胱炎や過活動膀胱や間質性膀胱炎の患者さんの多くに排尿障害が隠れています。

❹アボルブ
前立腺肥大症の治療薬です。男性ホルモンの一部を抑えて、前立腺肥大症を縮小させる薬です。
更年期を過ぎたご婦人は、様々な症状が出てきます。ホルモン的な観点から病態を見ると、卵巣で作られていた女性ホルモンが、更年期を過ぎると一気に低下して、約10分の1になります。ところが、副腎という臓器で男性ホルモンが作られ、ホルモンバランスで観ると、男性になってしまうのです。男性になったために、今まで隠れていた病気が自己主張するのです。
このような患者さんに、アボルブを服用すると、男性ホルモンが低下して、バランス上、女性に近づくので、症状が軽減するのです。

❺ビタミンD3
骨粗鬆症の患者さんに処方されるお薬(ワンアルファ錠)です。血液中のカルシウム濃度を上げて、骨にカルシウムを提供するように仕向けるのです。
ところが、ビタミンD3には抗腫瘍効果があるので、癌の患者さんに処方します。

❻葛根湯
本来中国では、肩こりの薬です。どういう訳か、日本では風邪の初期症状に処方されます。日本人の風邪の初期症状では、首筋から肩にかけゾクゾク感が生じ、その首筋から肩にかけての緊張を減らすと、風邪に効果があるのです。私も風邪の初期症状には、必ず葛根湯を処方します。おそらく、日本人に向いているのでしょう。

❼ ベタニス
過活動膀胱や頻尿の治療薬として有名な薬です。
膀胱三角部による関連痛症状に対して効果があります。例えば、原因不明の陰部の痒み(陰嚢・膣・肛門)、原因不明の慢性胃痛症、原因不明の坐骨神経痛、原因不明の舌の痛み、原因不明の幻臭に効果があります。

❽スピロペント
気管支喘息の治療薬です。交感神経刺激することによって、気管支を拡張させる作用があります。
乗り物酔いや船酔いの病態生理は、乗り物による頻繁な重心・平衡感覚の絶え間ない変化に交感神経が麻痺して、副交感神経が優位になり自律神経のバランスが乱れたために起きる現象です。そのような患者さんには、スピロペントを処方すると、交感神経が興奮して自律神経のバランスが改善し、酔わなくなります。

❾プロスタール
前立腺肥大症の治療薬です。抗男性ホルモンとして前立腺を縮小させます。薬の適応としては、毎日2錠で前立腺肥大症に、4錠で前立腺ガンの適応があります。前立腺ガンが確認できずに、PSA値が若干高くなった患者さんに対して、プロスタール2錠を処方します。すると、前立腺ガンが潜んでいたとしても、良性に近いグリソンスコア6前後の癌細胞であれば、癌細胞は消滅します。

❿グリシン(アミノ酸)
テレビCMで流れている「自然の睡眠薬」です。脳脊髄にグリシンが豊富だと神経の興奮が抑えられて、自然な睡眠を促します。頻尿の患者さんの膀胱を支配する自律神経には、グリシンが欠乏しています。そのためグリシして上げると、膀胱の興奮が治まり頻尿が改善します。

⓫テストステロン(男性ホルモン)
更年期を過ぎた男性で、うつ病・うつ状態になる方を時々見られます。若い頃に元気な人ほど、このような現象が起きます。テストステロンが多く分泌される人ほど、若い頃元気なのです。しかし、更年期を過ぎて、テストステロンの分泌が低下すると、うつ状態になるのです。テストステロンには、生活の中で経験したネガティブな記憶を封じ込める生理作用があるのです。そう考えてテストステロンの注射をすると、うつ状態が解消されます。

薬は化学薬品です。生体の複雑なシステムに対して作用をする可能性があります。保険適応の病名に掲げられている作用だけではありません。その証拠に予期しない副作用が出るのです。そのいい意味での副作用を利用できる可能性がある筈です。そのためには、病気の仕組みと原理を見極め、保険適応外であっても患者さんの治療に応用すべきです。


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