開業医の仕事
大学病院や先進医療機関の仕事は、現代医療を尖鋭化するのは、もちろんのこと、まだ一般的には普及していない臨床治験段階の最新医療を提供してくれます。
たくさんの専門医が集まって、診察・検査・治療していますから、本当に安心です。
そして開業医では手に入れることの出来ない高価な医療機器の数々や新薬をフルに使っての医療です。
また、開業医が診断できない病気の精密検査や治療を依頼されるのも仕事の内です。
では、最新の医療を行っていない開業医の仕事は、どうでしょう。
同じ医師会の先生から言われた事ですが、「開業医という者は、常識の範囲内の医療しか行ってはいけない」と言われました。
ところが、最先端の医療機関でも、常識的な教科書範囲内の診断・検査・治療しか行ってはくれません。これら大病院の医療行為で、不明、あるいは治すことの出来ないと言われた患者さんは、どうすればいいのでしょうか?
ここに最先端の医療機関での盲点が存在するのです。それは、初診で診た医師の誤診や診察の方向性の間違いが原因です。
例えば、坐骨神経痛が治らない患者を診た時に、担当医師は椎間板ヘルニアを疑います。そのために検査は、MRI検査・筋電図・神経の検査を行います。検査結果に異常なければ、「原因不明の坐骨神経痛か、ストレスが原因ですね?」と診断して、リリカやトラムセットや抗うつ剤を処方されて、……おしまいです。
ある坐骨神経痛の患者さんに至っては、椎間板ヘルニアが発見され、有名大学病院でヘルニアの手術を行いました。しかし、術後も痛みは取れずに、他の有名大学病院にセカンドオピニオンを依頼しました。MRI検査でも手術は成功しているので精神的と診断され、精神科の薬と麻薬を処方されました。それでも、痛みは取れずに、苦しんでいました。ある時、頻尿と陰部の痛みが出現したので、当院を受診しました。排尿障害を見つけて、保存的治療を行ったのですが治りませんでした。患者さんに切望され内視鏡手術を行いました。すると、術後に坐骨神経痛が消えたのです。つまり、坐骨神経痛は、排尿障害による関連痛だったのです。
この患者さんは最先端の医療機器で、どんなに検査しても分かる筈がありません。大学病院の教授も含めた前医の誤診と治療方針のミスだったのです。大学病院の医師たちは、常識的、教科書的医学知識の範囲内の最先端の集団であって、患者さんのせいぜい8割しか治すことが出来ません。残った2割の患者さんは、教科書的な考え方では、治すことが出来ないのです。
開業医は、臨床現場でたくさんの患者さんと接しています。私でさえ開業27年間に3万8千人以上の患者さんの診察を行ってきました。経験で積み上げた現実の世界の知識と、教科書的知識とのギャップを認識・獲得し、患者さんの治療に役立てています。開業医は、教科書的知識を基盤に、現実の世界に適応する考え方や診断法、治療法を導くことが仕事・使命と私は思います。
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