レディ・ガガさんの病気
昨日、今日のニュースや新聞に、アメリカの歌手レディ・ガガさんが、「線維筋痛症」のため、しばらく活動中止するという情報が発信されました。
インターネットでは、下記のような情報が掲載されています。
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活動休止を宣言していた日本でも人気の米歌手、レディー・ガガさん(31)が自身のツイッターで病名を告白。全身に激しい痛みを起こす病気「線維筋痛症」を患っているという。日本リウマチ財団のホームページによると、米国では人口の約2%に線維筋痛症がみられるとされており、日本でも患者数は約200万人と推計されている。いったい、どんな病気なのか。
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線維筋痛症は全身に激しい痛みが起こる原因不明の病気だ。30代後半~40代前半の女性が発症することが多く、気圧、気温、光、音などあらゆる外的刺激を痛みとして感じるため、進行すると外出が苦痛になるなど、社会生活が困難になる。
多くの病気は痛みを感じる部位に、炎症など痛みを招く原因が存在する。しかし線維筋痛症の場合、血液や画像の検査をしても、とくに異常は見つからない。
「人間のからだを守る反応である“痛み”を過剰に感じてしまうのが線維筋痛症という病気で、2段階のステップがあって発症すると考えています」と、東京医科大学医学総合研究所所長の西岡久寿樹医師は話す。たとえば、子どものころに親と死別する、転居を繰り返す、入院するなどで受けた精神的・肉体的ストレスがまず患者の中に存在する。それから一定の時間が経過して、さらに外傷、手術、身内の不幸や離婚など、新たなストレスが加わると痛みという形で症状が現れるという。免疫異常や感染症の潜伏期に似ていると、西岡医師は解説する。
線維筋痛症は全身の痛みのほか、ドライマウス(口が渇く)、ドライアイ、うつ状態、不眠、過敏性腸症候群など、さまざまな症状をともなう。そのためこれまでは関節リウマチ、シェーグレン症候群、膠原病など、他の病気と診断されることも多かった。
治療は、痛みやその他の症状を取り除く対症療法が中心になる。
西岡医師によれば、鎮痛剤リリカ(一般名プレガバリン)や、抗うつ剤などが使われることもある。
「たとえば人が腕をつねられたときに痛みを感じるのは、痛みの信号が脳に伝えられるからです。この痛みを伝える信号を弱めて、痛みを和らげるのがリリカの作用です。一方、痛みを抑制する信号を強めるのが抗うつ剤。患者さんにどちらのタイプの鎮痛剤が効くかは、使ってみないとわかりません」(同)
リリカが2012年に認可されるまで、保険治療で使える線維筋痛症の治療薬はなかった。
「リリカの認可によって、ようやく線維筋痛症という病気も保険診療上認められ、その治療も大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう」(同)
ただしリリカにはめまい、眠気、コレステロール値を上げるなどの副作用があるため、医師の管理のもとで使用する必要がある。また線維筋痛症はさまざまな症状を持つ病気なので、リリカ単剤でコントロールできることはまれだ。
「たとえば睡眠障害やうつ症状は精神科の医師、末梢神経疾患のような症状は神経内科、関節痛はリウマチ科と、各診療科の医師が連携して治療を進める、チーム医療が必要でしょう」(同)
※週刊朝日MOOK『新「名医」の最新治療2014』から抜粋。
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これを読まれて『あれ?』と思われた人はいませんか?
前回、テーマにした「カウサルギー」に似ていると思いませんか?ただし、キッカケになった外傷がないだけです。
そうなんです、線維筋痛症もカウサルギーも関連痛として捉えることができます。その証拠に、線維筋痛症の10%の患者さんに間質性膀胱炎が併発しているのです。間質性膀胱炎は、かねてから私が力説しているように、排尿障害が原因です。おそらく、レディ・ガガさんにも排尿障害があるのでしょう。
表は、線維筋痛症のステージ分類です。ステージⅤに膀胱・直腸障害の記述があります。一般的には、線維筋痛症が悪化して膀胱・直腸障害が出現すると考えられています。隠れていた膀胱・直腸障害が、それまで関連痛症状として線維筋痛症が出現していたのですが、長い期間かかって、ついに本性としての膀胱・直腸障害が出現したとも考えられます。
線維筋痛症患者さんの体表の皮膚・筋肉痛以外の症状として、頻尿15%、残尿感15%、排尿痛10%がかなりの頻度で出現します。これらの症状一つしかない患者さんもいれば、複数重なる患者さんもいます。それを考慮すると、線維筋痛症の患者さんの少なくても10%〜多くて40%も膀胱の症状が存在するはずです。間をとって25%前後もの患者さんにあるのです。これは、原因不明の線維筋痛症の本質を見極めるための注目に値する症状です。
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コメント
高橋先生
こんにちは。似ている!と思いました。高橋先生にお世話になって色々知って以来、難治療性の痛み/目まい・メニエール/耳鳴り等々と聴くと、「この人もひょっとして排尿障害が?」と思いを巡らせるのが条件反射になっています。
数年前、武田鉄也さんのナレーションで「神経性疼痛はお医者さんへ」というキャンペーンCM(リリカ絡みだったのでしょうか)が盛んに流れていましたが、この時も「排尿障害の可能性?」「最後は心療内科送りになっちゃうよ~」と思いました。
それにしても、「新たなストレスが加わると痛みという形で症状が現れる」は昨今、どんな病気の話でもそこかしこで聴く常套句ですね。絶対に信じません。(多少の頭痛などは感じることもあるでしょうけれど。)大震災の避難所で、離婚相談所で、過酷な働き方をしている職場で、大勢の方が痛い痛いと転げまわっている光景などあるのでしょうか。ウンザリします。
明日、術後の経過ご報告のお電話をいたします。宜しくお願いいたします。
投稿: 金沢のY | 2017/09/15 12:21
水曜日は、診察で、私の要望や病気以外の相談にも応じて頂きありがとうございました。。。実は8月末に、本屋で、線維筋痛症(言葉を知りませんでした)の本の中に、膀胱経、百会、カップリング、と言う言葉を見つけ、思わず買ってしまい、まだ読んでいませんが、毎朝、百会をブラシでトントン叩いています(笑)。ガガさんの報道を聞いて、私の脳でも、すぐ先生のブログと繋がりました。すごいです。。ブログで、昨年の夏初診の私の診察番号より、今年の夏初診の方の番号が1000増えているのが判りました。相当数の方が、同じ様な症状で悩まれているんですね。昨年、先生のブログを見つけなかったら、私の精神はどうなっていたかと思うと。。。地元の防災訓練等に、不安で出れなくなって、気にしていてくれていると思いますが、理解されないだろうと、理由をどうしても話す事が出来ません。友人五人に話したら、過活動膀胱症状を二人が持っていました。先生の考えが認知され、当たり前になれば、悩んでいる女性が救われるのにって思います。。。薬で少し様子見して、お電話しますので、またお願いします。
投稿: 静岡県 | 2017/09/15 12:35
「先生、ガガさんを助けてあげて欲しいです。」
「無理だよ。だって排尿障害があるなんて思ってないんだから。」
奇跡でも起きて関係者の一人でも高橋先生のブログにでも
辿り着けないかしら?と、思ってしまいます。
だって、私も本当に正気を失うほど辛かったですから。
やっぱり高橋先生はこの世での使命がまだまだ、まだまだおありで無事、帰っていらっしゃったのですね。
息子が先生と私のやり取りを見ていての帰り道
「あなたって常識の無い人なの?
普通、医者に対してああいった口のきき方しないでしょ?」
イヤイヤ、息子よ、違うんだって。
高橋先生と話していると恐らく誰でもそうなるんだって。
ある域に到達された素晴らしい方というのは、ちっとも威張ったところがなく親しみやすく、だからお母さんもそういう会話になっちゃうんだよ。
高橋先生のような方は権力や権限でなんか物は言わない。
自然と沸き出る権威で人々が寄って来るんだよ。
お前もいつの日か、そういう人間になって欲しい。
私は高橋先生に巡り会い治療を受ける事が
出来た。
巡り会うべき人に巡り会えた。
こんなに有り難い事はないですね。
私にも功徳があった?のですね。(笑)
高橋先生も皆様もどうぞ、どうぞ良い週末を。
投稿: | 2017/09/15 18:36
高橋先生
無事、母の転院付き添いが終わり帰って来ました。レディガガさんのこの報道は本当に不思議なタイミングですね。今朝の続き・追伸を投稿させて下さい。
>線維筋痛症は全身の痛みのほか、ドライマウス(口が渇く)、ドライアイ、うつ状態、不眠、過敏性腸症候群など
これは!先生のHPに書かれてきた関連症状に全て含まれています!私も、線維筋痛症こそありませんでしたが、不眠や耳鳴り・頭痛等から「うつ症状」と診断され、続いて腹痛と原因不明の酷い下痢が一年治らず、最後に満を持して膀胱の痛みと排尿困難を発症しました。
>この痛みを伝える信号を弱めて、痛みを和らげるのがリリカの作用です。一方、痛みを抑制する信号を強めるのが抗うつ剤。
私の体感レベルの話ですが、抗うつ剤で激しい痛みが和らぐとは思えません。また、日本は抗うつ剤の大消費国だという記事を読んだ事があります。歯科治療で何時までも痛みを訴える患者さん(入れ歯が不出来で当たって痛いと何度も訴える患者さんまで)に精神安定剤や抗うつ剤を処方する事を「最新歯科治療」としてNHKが紹介するのを5年位前に見ました。依存性・離脱症状もある薬の濫用は恐ろしいです。
>子どものころに親と死別する、転居を繰り返す・・・さらに外傷、手術、身内の不幸や離婚など、新たなストレスが加わると痛み・・・免疫異常や感染症の潜伏期に似ている。
偉い先生には失礼かと思いますが、これは素人が見ても余りにも?に感じます。潜伏期に似ていると言うなら発症まで時間がかかる病気なら全部似ている事になりますし、似ているからどうだと言いたいのか良く解りません。現代社会で珍しくもない転居、入院、外傷、手術、身内の不幸、離婚が難治性の深刻な痛みなど生み出すでしょうか。確信がお有りなら高橋先生のように計数的データを示すべきではとも思います。
『その証拠に、線維筋痛症の10%の患者さんに・・・本質を見極めるための注目に値する症状です。』
排尿障害がどれほど多くの病気の知られざる原因になっていることだろう、この治療をすれば、軽い不定愁訴から激しい痛みまでどれほどの患者さんが楽になることことだろう・・・高橋先生に助けて頂いている経験者として間違いないと思っています。
投稿: 金沢のY | 2017/09/15 20:55