脈波伝播速度(脈拍)と血流速度の差異
手首の橈骨動脈を触れると、ドキッ・ドキッ・ドキッという感触を感じます。
そのドキッは、心臓のドキッとほとんど同時にシンクロしているのです。
心臓から排出された血液が、手首の血管をドキッとさせているとお思いでしょう。一般の医師もそう思っています。実は、それは誤解なのです。
血管のドキッは、脈波によるものです。脈波伝播速度は秒速6メートル~8メートルの速い速度です。仮に6メートル以上の腕の長さの人でも、たった1秒間で末端の橈骨動脈に到達できる速度です。ですから、心臓の鼓動と末梢動脈の拍動は、腕の長さが1メートルの人で、0.16秒で橈骨動脈に到達します。ほぼ同時です。
脈波伝播速度を物資の振動伝播速度と考えた場合は、もっと大きく差が出ます。動脈血管の硬さをゴムやシリコンと同等と考えると、それら物質の振動伝播速度は、毎秒1500メートルになり、音速の3倍速いのです。したがって、脈波伝播は振動伝播ではありません、心臓の鼓動エネルギーが物理的に動脈という物質に伝播している訳ではないのです。
ところが、心臓から排出した血液は、毎秒0.6メートルしか進まないのです。腕の長さが6メートルの人であれば、橈骨動脈まで10秒もかかることになります。したがって、腕の長さが6メートルの人の場合、心臓の1回の拍動で6メートルの先の橈骨動脈まで、実際の血液の到達する時間と、脈波伝播速度の時間が、ら10秒ー1秒=9秒の差があることになります。
つまり、橈骨動脈の拍動は、心臓から拍出された血流によるものではない事が分かります。脈波伝播速度の説明のイラストは嘘です。では、橈骨動脈の物理的な拍動現象は血流の圧力でないならば、なぜ起きるのでしょうか?また、橈骨動脈が手術や外傷で切れてしまう時には、そこからピューと噴き出る出血は、脈打たず連続的に噴出します。動脈の拍動が血流によるものならば、間欠的に噴出するはずです。
実は、心臓は心電図で分かるように、電気仕掛けの臓器です。心臓内の血液を駆出する時に、左心室からの電気信号が大動脈の内膜に伝達されます。内膜の内皮細胞が電気信号を次々に隣の内皮細胞に伝達します。内皮細胞が刺激されると、一酸化窒素NOが放出されます。その一酸化窒素NOが直ぐそばの動脈壁の平滑筋を弛緩させます。すると、弛緩した平滑筋の部分の動脈壁だけが拡張します。それが拍動です。その拍動のリレーが脈波になります。ですから、内皮細胞の電気伝導速度と脈波伝播速度がほぼ一致するのです。この内皮細胞の電気伝導らの仕組みと、神経電気伝導の仕組みは近いので、両者の速度はほぼ同じです。特に、有髄神経の自律神経の節前線維の毎秒3メートル〜15メートルの速度と脈波伝播速度の6メートル〜8メートルはほぼ同じです。
では、なぜ動脈壁は拍動するのでしょうか?もしも、動脈が拍動しなければ、どうなるでしょうか?実は、血栓ができてしまうのです。
動脈が拍動しない単なる管であると、血流の動脈壁の直ぐそばに乱流が生じます。ホームに立っていて、直ぐそばを特急列車が通過する時に感じる、あのツムジ風です。動脈壁に乱流が生じると、動脈を覆っている内皮細胞が傷つきます。すると、そこを補修するために血栓ができるのです。乱流で大きくなったら血栓が剥がれ、それが血栓症や心筋梗塞・脳梗塞・肺梗塞の原因になるのです。動脈が一定のリズムで拍動すると、乱流はできなくなるのです。
その証拠に、血管外科の手術で人工血管置換術後の経過を実施すると、術後に血栓ができるので抗凝固剤を服用する必要があります。
原因不明の動悸があります。
貧血も心臓病も肺病もないにもかかわらず、突然に動悸が発症することがあります。「ストレスですね」と診断されることが多いのです。でも、患者さんは、ドキドキして苦しいのです。実際に手を胸に当てると、鼓動を強く感じるのです。さて、これはどう考えれば良いのでしょうか?
心臓の鼓動に影響して、動脈が拍動した事を解説しましたね。しかし、その拍動が、どの程度の拍動力か決められていません。刺激を受けた内皮細胞の感受性によっては、大量の一酸化窒素NOを放出するかも知れません。大量に放出されれば、平滑筋の弛緩は強烈になり、動悸として自覚するでしょう。では、このような状況の際にはどうすれば良いのでしょうか?一酸化窒素の刺激を受けた平滑筋は、弛緩するので、その逆の収縮させればいいのです。そのためには、交感神経を刺激すれば、血管は収縮します。そのためには、喘息の治療薬であるスピロペントを少量服用すればいいのでは?と思います。あるいは、気管支拡張剤のスプレーを発作の時だけ実施すればいいでしょう。あくまでも、私の個人的見解です。
医療関係者に問題です。動脈硬化になると脈波伝播速度が、6メートル→10メートル以上に速くなります。物質の固有振動伝播速度ではありませんから、動脈が硬くなったからというのは、理由になりません。では、動脈硬化になると、なぜ脈波伝播速度が速くなるのでしょう?
私たち人間が五感で感じている事と、現実の世界とは、常に矛盾が秘められています。
以上は、私が動脈硬化について調べた際に疑問を感じて、心臓鼓動、動脈拍動、血流速度、脈波速度の微妙な不一致から整合性を求め考え出した仮説です。正しいかどうかは、読者が判断して下さい。
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