薄い影❺
PSAが高いので前立腺癌を疑われて来院する患者さんが多くいます。都内の患者さんはもちろんのこと、日本全国、あるいは海外からも来院される患者もおられます。そのほとんどは、排尿障害や前立腺肥大症によるPSAが高くなったりするのですが、15%くらいの方は、本当に前立腺癌です。
最近、私の能力を再確認することがありました。
診察・検査前の、初めにお顔を拝見した時から「影が薄く」見える患者さんに遭遇しました。PSAが高いと言っておられていましたが、この時点で「前立腺癌」と分かりました。診察・検査をすると、やはり前立腺癌です。遠方から来院された患者さんなので、今後の治療を相談しました。私の抗癌剤と補助療法の治療を受けたいと希望されました。その時です、その答えが返って来た瞬間、患者さんの顔から「薄い影」が消え、正常の影に戻ったのです。驚愕の一瞬でした。そしてこの患者さんは私の治療で助かる可能性が見えたと判断しました。
こような体験を別の患者さんを含め2度も経験しました。私の能力は今も健在です。
大学病院のPSA検査で、わずかに高いからと言って、前立腺針生検を勧められた男性が来られました。ご高齢の小児科の開業医でした。超音波エコー検査と触診で明確な前立腺癌は認められませんでした。都内の開業医の先生なので、ご家族と一緒に定期的に来院されました。前立腺癌の所見は全くないのですが、次第に「影が薄く」見えるのです。お会いするたびに気になって仕方がないのです。
別の病院で、貧血の精査のために様々な検査を受けておられました。最近になって、腎臓に良性か悪性か不明だが、影があると言われて、セカンドオピニオンで再び来院されました。それを聞いて「!」と思い、超音波エコー検査を早速実施しました。腎癌でした。「影が薄く」見えたのは、これだったのです。患者さんは、その後、大きな病院でさらに精密検査を行ないました。結果、腎臓ガンでした。色々な治療をしましたが、残念ながら亡くなられました。
患者さんのご家族が、その後お礼にいらしたのですが、私が前立腺癌にばかり注目していて、腎癌を見抜けなかった事をお詫びしました。ご家族は、亡くなられたご高齢の医師が、後輩である私と診察でお会いできるのを楽しみになさっていたので、お気になさらないでくださいと、逆に慰められました。
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コメント
お盆は診察やってますでしょうか?
【回答】
17日から通常の診療をします。
投稿: m | 2017/08/14 06:00