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推理小説

目の前の患者さんは、一瞬にして出現した訳ではありません。
患者さんの生まれてから今日までと、これから未来への途中を見ているだけです。
ほとんどの医師は、目の前の一瞬の患者さんしか診察しないのです。これでは、簡単に誤診してしまいます。

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患者さんの過去の既往歴だけではなく、患者さんが自覚していない症状も聞き出さないと、病気は本当のことを告げてくれません。
目の前の患者さん1人が1つの物語を記した一冊の書籍と同じです。医師は患者さんの物語を斜め読みするのではなく、精読し行間を読まなければ、患者さんの悩ます原因を見つけることは出来ません。

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患者さん各々の秘密が隠された物語を読み解くことが、医師の本来の務めです。そのためには、患者さんの語る物語を真剣に聴き入ることです。
シャーロックホームズが、事件の難問を紐解き、数々の証拠から事件の物語を作り、事件の解決に結びつけるのと同じです。医師はシャーロックホームズになった気持ちで患者さんを助けなければなりません。

【備考】
シャーロックホームズの作者のコナンドイルは、実は、医師です。考え方が分析的で、イギリス流医学の考え方です。ドイツ医学のように患者さんの病気を学問的にを見るのではなく、病人を治すことを実践するのがイギリス医学です。私の母校、慈恵医大の創立者である高木兼寛先生は、イギリス医学に影響され、イギリスのセイントトーマス医学校に留学してイギリス医学を身につけました。慈恵医大のモットーは、「病気を診ずして、病人を診よ」です。
Img_0108当時、遠征先で原因不明の脚気によって、軍人が死亡したり障害者が多数出現することが問題になっていました。ドイツ医学の信奉者である森鷗外(陸軍軍医総督)は伝染病が原因と主張し、イギリス医学の高木兼寛(海軍軍医総督)は栄養障害と主張していました。高木兼寛は二隻の軍艦を利用して、一隻は白米の通常食、もう一隻は麦飯の特別食を持たせて遠征航海させました。その結果、白米食の軍艦からは多数の脚気患者さんが続出しました。ところが、麦飯食の軍艦からは1人も脚気患者が出ませんでした。森鷗外が指導した陸軍からは何万人もの脚気患者が出て犠牲になりました。イギリス医学の勝利でした。
しかし、ドイツ医学が主流であった日本医学界からは、高木兼寛の功績は否定され、後の時代でやっと認められました。高木兼寛は功績を認められ、男爵の称号を得て、「麦飯男爵」と呼ばれるようになりました。

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コメント

昨日テレビのニュースで腎臓病の治療が大きく変わるという東北大学の女性医師試みを放送していました。
IP細胞ではない新しいタイプの細胞を移植することによって治療が大きく進展する可能性があるとのことです。
速く実用化されて先生の役に立つことを願っています。
【回答】
ありがとうございます。

投稿: 京都在住 | 2017/07/13 08:20

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