前立線ガンを見つけるための設定
超音波エコー検査の設定は、検査対象に応じて変えることができます。
腹部一般、腎臓、大動脈、前立線、膀胱、筋肉、乳腺などです。高価な機器ほど、設定が多数あるのです。
以前から前立線を観察する時には、設定は腹部にしていました。しかし、この設定では、前立線の大きさや形状や石灰を観察するには良いのですが、前立線組織の中の前立線ガンを発見するためには適当とは思えませんでした。
そこで、設定を次々に変えて観察して見ました。すると、腎臓設定が前立線内のガンを描出するのに適切だと分かったのです。それ以来、前立線を観察する時には、腹部設定と腎臓設定の両方で観察することにしたのです。
前立腺は、前立腺細胞と線維細胞と平滑筋細胞の3種類の細胞が混在しています。線維細胞と平滑筋細胞は、水分が少ないので超音波エコー検査では白く描出されます。前立腺細胞と前立腺ガン細胞は、水分が多いので黒く描出されます。前立腺ガンの患者さんは、一般的に40歳以上の中高年です。前立腺細胞は消えて線維細胞と平滑筋細胞の集合体ですから、前立腺全体が白く描出されます。その白さの中に黒い塊が描出されれば、特に前立腺の外側(外腺)に前立腺ガンは頻発しますから、それは前立腺ガンです。最後に直腸触診で黒い部分が硬ければ、前立腺ガンと確定できます。
今回の新規の超音波エコー機器では、あらかじめ前立線の設定になっていました。これは、経腹式のエコー検査ではなく、経直腸式のエコー検査の設定なのでしょう。この設定では、逆に判別しにくいのです。そこで、再び腎臓設定に変えて、画像出力を高めると、ガンが浮き出てきます。
この写真は 、超音波エコー検査の設定を腎臓にして、前立線内のガン(矢印)を浮き出させた所を示しています。前立腺全体が白く描出されます。唯一前立腺の外側に黒い部分が見えます。直腸触診で触れると、黒い部分が硬く感じます。前立腺ガンです。前立腺ガンの場合、良性に近いガン(グリソンスコア6前後)は、境界線が明瞭で丸く見えます。悪性度の高いガン(グリソンスコア8以上)は、境界線が不明瞭でギザギザに見えます。この写真の患者さんは、良性に近い前立腺ガンでしょう。
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