膀胱炎症状と膀胱の形状変化
膀胱炎症状すなわち慢性膀胱炎、過活動膀胱、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症と呼ばれる患者さんが新患で毎日1人以上来院します。毎月20人以上、年間で300人以上来院します。
そのような患者さんのほとんどが、尿検査、細菌培養検査、超音波エコー検査、膀胱内視鏡検査のいずれか、あるいは複数の検査をすでに実施されて、異常なしと判断されています。
泌尿器科医師は、実は正式に超音波エコー検査を習っていません。超音波専門医は画像を観ているだけで、問題意識を持って患者さんを診ていません。ですから、超音波エコー検査が異常なしと判断されていても、全く信用出来ないのです。私は救急病院で身につけた超音波エコー検査技術を駆使して、患者さんを診て、超音波エコー検査をリアルタイムで実施しています。問題意識を持って見ているので些細なことも大きく見えてしまうのです。
この写真のエコー検査結果のように、膀胱括約筋の方向が膀胱出口ではない方向(緑の矢印)に向かうため、必然的に膀胱三角部が厚くなり、それに比例するように症状が強くなります。
三角部を数値で正確に把握することは、なかなか難しいのです。なぜかと言えば、形状が複雑だからです。膀胱の内側から見て三角形で、超音波エコー検査では、側面像と正面像しか把握できません。誰もが正確的に測ることのできる部分は、三角部の厚さを一番表現している膀胱出口と膀胱括約筋の先端との距離(赤い矢印)です。正常は膀胱出口に向かっで5mmです。これだけでは膀胱三角部を正確には把握できるではありませんが、誰でも測定できるのは、これしかないでしょう。
この測定値と症状の関連性を調べてみました。
症状を数値化するために、症状1つが1点としてスコアを加算します。
ただし、頻尿8回〜10回1点、頻尿11〜20回まで2点、頻尿21〜30回まで3点、‥‥とします。
夜間頻尿は、1回1点、2回2点、3回3点‥‥とします。
【症例❶27歳#35235】
症状スコア:4点
(恥骨の痒み、膣の痒み、肛門の痒み、頻尿8回)
経過:2ヵ月前から症状出現。
緑の矢印:膀胱括約筋の方向、本来は膀胱出口に向かうはず
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:7mm
【症例❷75歳#35278】
症状スコア:3点
(膀胱疼痛、頻尿9回、夜間頻尿1回)
経過:4年前から発症、膀胱疼痛症、老人性膣炎、膀胱炎の診断で、ホルモン剤、抗生剤、リリカを処方されるも改善せず。
緑の矢印:膀胱括約筋の方向、本来は膀胱出口に向かうはず
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:16mm
距離が長い割にはスコア点数が少ないが、通常の処方では、なかなか改善しません。そのため裏処方により症状は軽快しました。
【症例❸67歳#35641】
症状スコア:4点
(陰部のムズムズ感、陰部の圧迫感、陰部のチクチク感、頻尿10回)
経過:2ヵ月前から発症、過活動膀胱と診断され、ウリトス、ベシケアを処方される。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:9mm
【症例❹60歳#34637】
症状スコア:4点
(恥骨の痛み、頻尿30回)
経過:8年前に発症、大学病院で「気のせい」「冷え性」と診断。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:8mm
【症例❺49歳#34754】
症状スコア:4点
(膣の痛み、膣の痒み、頻尿10回以上)
経過:4ヵ月前から発症、カンジダ性膣炎と診断されたが治らない。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:9mm
【症例❻72歳#35698】
症状スコア:3点
(陰部のムズムズ感、下腹部の痛み、頻尿10回)
経過:3ヵ月前から発症、公立病院・大学病院受診し、「何でもない」という診断。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:14mm
距離が長い割にスコア点数が少ないですが、通常処方する治療薬では、なかなか改善しません。
【症例❼61歳#33532】
症状スコア:5点
(尿道口の痛み、頻尿18回、夜間頻尿3回)
経過:乳癌手術後にカテーテル抜去してから膀胱炎症状出現し、治らない。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:15mm
やはり通常処方する治療薬では、なかなか改善しません。裏技を使用し現在経過観察中です。
【症例❽70歳#33287】
症状スコア:9点
(常に感じる尿意、頻尿15回、夜間頻尿6回)
経過:1年前に膀胱炎と診断され、それ以来、症状が治らない。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:9mm
【症例❾52歳#35708】
症状スコア:3点
(下腹部の不快感、陰部の痒み・ムズムズ感、排尿痛)
経過:2年前から下腹部の不快感出現、排尿により治まっていた、今年の6月より排尿しても治まらなくなった。婦人科、泌尿器科に受診しても異状なしと診断されていた。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:11mm
距離が10mmを超えているので、やはり通常の処方では治りません。
【症例❿51歳#34013】
症状スコア:4点
(排尿痛、残尿感、下腹部不快感、夜間頻尿1回)
経過:2年前から膀胱炎を年に6回繰り返していた。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:6mm
【症例⓫62歳#35582】
症状スコア:4点
(尿が溜まると膀胱が痛い、下腹部が重い、頻尿10回以上)
経過:3年前から下腹部が重く感じる。県立病院、日赤病院、個人クリニック6軒で診察したが、「精神的ストレス」と診断。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:8mm
【症例⓬#34570】
症状スコア:2点
(排尿痛、頻尿10回)
経過:4年前から排尿痛を繰り返し、間質性膀胱炎と診断されて抗うつ剤のトリプタノール、鎮痛剤のトラマールを処方される。膀胱水圧拡張を受けたが、膀胱容量が200ml➡︎150mと逆に少なくなる。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:8mm
【症例⓭#35736】
症状スコア:3点
(下腹部不快感、尿の勢いがない、夜間頻尿1回)
経過:4ヵ月前より症状出現し、地元の泌尿器科で診察・検査するも異常なしと診断。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:8mm
【症例⓮#34860】
症状スコア:3点
(尿道口の痛み、陰部の痛み、頻尿10回)
経過:7ヵ月前より症状出現し、地元の泌尿器科で過活動膀胱と診断されるも治らず。
赤の矢印:膀胱出口=膀胱括約筋の距離:11mm
この患者さんは、距離が11mmと長かったにも関わらず、症状は通常治療により直ぐに治りました。
✳️これまでの結果から推理できることは、症状が発症するためには、膀胱出口=括約筋の距離が7mm以上であることが必要です。逆に、10mm以上もあると、症状の数は少ないですが、通常の処方ではなかなか治らない難治性であることが判明しました。
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