アニサキスの治療薬と・・・
先日、朝の情報番組を見ていたら、アニサキスの対処法がいくつか挙げられていました。
私も救急病院に救急医として勤務している時に、腹痛患者さんの内視鏡検査で、何回かアニサキスを発見し、鉗子で除去した経験があります。胃の粘膜に結構強く食らいついていて、鉗子で引っ張り除去するのが大変でした。除去した胃の粘膜の跡からは、出血が滲み出るほどでした。この現場を見ていれば、アニサキスによる痛み症状は、アニサキスが胃壁に噛みついているからと思ってしまっても仕方がないでしょう。
実は、痛みの原因はアニサキスが噛みついている物理的な痛みではなく、アニサキスの口から分泌される成分にアレルギー反応が起きて痛くなる化学的な痛みなのだそうです。その際に、胃粘膜の平滑筋が異常興奮・収縮・緊張して痛み感覚になるのだそうです。
内視鏡検査で除去する以外に、ブスコパン、正露丸、安中散、香蘇散があるそうです。
アニサキスは、人間の体内では生存できないので、そのまま放置すれば次第に痛みはなくなります。しかし、人によっては、強く反応して腫瘤形成や腸閉塞になる危険性があります。そのためにも、薬剤治療薬が必要になります。
ブスコパンは、昔から腹痛や胆石発作や尿管結石や胃痙攣の際にたびたび処方される鎮痙薬です。今時、胃痙攣などという病名はありませんが、胃や胆管や尿管の平滑筋を抑える作用があります。しかし、前立腺肥大症などの排尿障害が強い患者さんに処方すると、尿閉状態になることがあります。
正露丸は、明治時代から販売されている下痢止めの胃腸薬です。細菌感染性胃腸薬に適応があり、殺菌作用が主な治療薬です。正露丸もブスコパンと同じように平滑筋の鎮静作用もあります。したがってアニサキスに効果があるのはこの平滑筋に対する作用でしょう。
安中散(ツムラ#5)は慢性的な胃腸症状の際に処方する漢方薬です。特に胃の痛みに効能があります。ですから、この漢方薬も胃の平滑筋の興奮を抑える作用があるのでしょう。
香蘇散(ツムラ#70)は、神経質で胃弱な人への処方薬です。香蘇散の「蘇」とは紫蘇葉(シソの葉)のことで、昔から殺菌作用があるとされています。また、抗アレルギー作用もありますから、アニサキスの分泌する成分のアレルギー反応を抑える作用が利用できるのかも知れません。
私が、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんに、排尿障害の治療薬であるαブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフなど)や頻尿治療薬であるベタニス・ベシケアを処方するのは、すべて興奮している膀胱・前立腺平滑筋を標的にしています。もしかすると、正露丸や安中散にも、これらの病気の患者さんに効能があるかも知れません。異なる病気で効果ある場合、病気の本質が露見することがあるのです。正露丸や安中散は、Amazonや楽天などの通販で簡単に購入できますから、今服用しているお薬で効果が得られない人は、服用してみるのも手かもしれません。
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