« 神経因性膀胱 導尿の後遺症「膀胱のカビ感染」 | トップページ | 外科学会認定登録医 »

超音波エコー検査で判別できる前立腺と膀胱の形態学的所見

私は、排尿に問題をかかえた患者さんに対して、必ず超音波エコー検査を実施します。
一般的に、泌尿器科医は、エコー検査なるものを正式には学習していません。大学病院などの大きな病院では、放射線科の医師や検査技師が、ルーティンの方法でエコー検査し、その診断を放射線科医が読影し、診断結果を泌尿器科医が参考に読んでいるだけです。
放射線科医も画像を見ているだけで、実際の患者さんを診ずに診断しています。実際の患者さんの訴えや他の所見をフィードバックなしで診断しています。ある意味、画像だけの机上の空論を報告書に書いているだけです。
私は、大学病院勤務時代はエコー検査に重きを置いていませんでした。研修医の頃のエコー検査機器は、大した画像ではなかったからです。

ところが、救急病院に転職したら、そんなことは言っていられませんでした。急患の状態を正確に把握するためには、血液検査、レントゲン、心電図、CT検査、聴診器、身体的所見、エコー検査しかありません。これらの検査情報を駆使して、患者さんの状態を正確に把握して、緊急手術するかしないかを、短時間に決断するのです。

その際に、エコー検査がとても重宝しました。そのころには、エコー機器も進歩し、画像はとても鮮明でした。リアルタイムに所見が得られ、患者さんの顔を見ながら、患部に直接アプローチ出来るのです。患者さんの症状とエコー所見の一致を何度も経験しました。そんな状況で、エコー検査を毎日5件以上実施し、年間1500件、救急病院の3年間で4500件以上研鑽しました。すると、その救急病院の毎日のエコー検査担当は、外科医の私になったのです。

開業医になってからは、年間500件✖️28年=1万4000件もの多くの患者さんを診ています。ですから、初診の患者さんが過去のエコー検査で異常なしと診断されたと言われても私は信じませんし、異常のなかった患者さんに遭遇したこともありませんでした。
そこで、エコー検査所見の主な要点を解説しました。

【エコー検査所見のポイント】
❶形
Normal2dlateral
前立腺の正常な形状は、三角形です。詳しくは、膀胱側が底辺の三角形なのです。ですから、前立腺の形が三角形でなければ、明らかに異常です。例えば、丸型とかフットボール型は異常です。

Bph35436m65ps
右の写真は、前立腺肥大症の患者さんの所見です。前立腺が大きいのはもちろんんこと、膀胱三角部がせり上がっていて、どう見ても前立腺が三角形に見えませんよね。

❷大きさ
前立腺の正常の大きさは、20ccです。ですから、20cc以上の大きさであれば、前立腺は大きいと判定します。歳相応と診断してはいけません。

❸成分
前立腺の腺細胞は水分を多く含んでいるので、エコー検査の画像では黒く描写されます。
ところが、前立腺肥大症は平滑筋と線維組織で構成されていますから、水分が少ないためエコー検査の画像では、白っぽく描写されます。ですから、エコー検査で黒っぽく描写される前立腺は柔らかく、排尿障害はそれ程でもなく、白っぽく描写描写される前立腺は硬く、排尿障害が強いと推察できます。

❹膀胱括約筋の走行と膀胱三角部の厚さ
Cp35399m55uonome
排尿障害が長期間継続すると、膀胱括約筋の走行が膀胱出口から尿道に変異します。何故なら、排尿の度に、膀胱括約筋が尿道側に牽引されるからです。すると、相対的に膀胱三角部が厚くなります。膀胱三角部は膀胱の知覚センサーですから、膀胱三角部が肥厚している患者さんは、頻尿、残尿感、原因不明の痛みや痒みなどの症状が多発します。この状態を私は「膀胱の魚の目」興奮と呼んでいます。
右の写真は、慢性前立腺炎と診断された患者さんの所見です。膀胱三角部が突出していて、いわゆる膀胱の魚の目状態です。頻尿が出ない患者さんの場合は、その分、不定愁訴が多くなります。その不定愁訴を理解出来ない医師に遭遇した場合、「気のせい」と誤診されるのです。この形状変化は女性の膀胱にも認められます。

❺静脈瘤
Bnsvx35603m192
前立腺や膀胱周囲の静脈が発達し、静脈瘤として確認できます。これは、「瘀血」と診断される所見ですが、実は排尿障害のために、強い圧力が長期にわたり加えることで起きる所見です。写真の左側が側面像、右側が正面像です。赤い矢印が静脈瘤で青い矢印が結石です。正面像は一見してカエルの顔に見えます。


❻膀胱粘膜
Bph35250m59dentistps
正常の膀胱粘膜は凸凹のない平滑な形状としてエコー検査では描写されます。もしも、膀胱粘膜が凸凹の形状を認められるようであれば、排尿障害による肉柱形成を疑います。写真の矢印部分が肉柱形成です。

❼前立腺の石灰化
Cp35488m37ps
慢性前立腺炎や前立腺肥大症の患者さんの前立腺には、かなりの確率で、前立腺内に石灰を認めます。私の経験では、前立腺石灰の認められる患者さんの多くに排尿障害が認められます。写真は慢性前立腺炎の38歳の患者さんの所見です。矢印で示すのが石灰化です。

❽先天性嚢胞
Cyst35064m68
50人に一人の確率で発見できます。そのような患者さんの場合、PSA検査の結果が高い(前立腺ガンを疑われ)と言って患者さんは大いに心配されます。写真の患者さんは、PSA検査の値が少し高いと、前立腺癌を疑われた患者さんです。超音波エコー検査で側面象にも正面像にも嚢胞(黒い円形部分)が確認できます。ミュラー管嚢胞と言います。

❾前立腺ガン
Pca35191m50dentistpe
PSA値が高いと来院された患者さんの中には、本当に前立腺癌を発見することがあります。前立腺ガンは、水分を多く含んでいるので、黒く描出されます。矢印で示している部分が前立腺癌です。7㎜×4㎜×7㎜の大きさです。触診で確認すると同じ部分にしこり・硬結を触れます。

➓膀胱括約筋の変形
排尿障害が続くと膀胱括約筋の断端が変形します。

|

« 神経因性膀胱 導尿の後遺症「膀胱のカビ感染」 | トップページ | 外科学会認定登録医 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 神経因性膀胱 導尿の後遺症「膀胱のカビ感染」 | トップページ | 外科学会認定登録医 »