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早期発見

先日、中村獅童さんや麻倉未稀さんが公表したように、芸能人やタレントの癌の早期発見が報道されています。
ところが、早期発見と診断されて治療した過去の有名芸能人やタレントが、その後、癌死の報道が相次いで報告されることが多くあります。

坂東三津五郎さん然り、中村勘三郎さんしかりです。有名な病院や高度医療機関で「早期発見」と診断されて積極的な治療を実施したにもかかわらず、その結果が不幸な末路を招きました。結果から考えると、本当に早期発見?と疑わざるを得ません。
医師の早期発見の基準が安易と思えます。「小さいから・・・」、「たまたま発見されたから・・・」、「転移や浸潤所見がないから・・・」などなどでしょう。


しかし、この程度の判断基準は、素人でも思い付くことです。専門の医師が、この程度では情けないです。もしも癌細胞に意思があるとすれば、「何が早期発見だよ!」と思うでしょう。
現在のどんなに優れた検査機器であっても、発見可能な癌の大きさは、最小でも直径約5ミリメートルです。その大きさの中に、癌細胞は約2億個〜3億個存在しひしめいています。もしも、癌細胞を人間に例えれば、人間2億人を一か所に集めて、周囲に縄を張り、「ここから出ないでジッとしていてください!」と命令したとします。果たして、ジッとしている人間がどのくらい存在するとお思いですか?縄の結界をはみ出す人もいれば、縄の外に出て行って自由にフラフラする人も出てきます。その人間が日本人ではなく、中国人やアメリカ人やブラジル人であれば、もっと制御ができないでしょう。早期発見の直径5ミリメートルの領域を2億個の癌細胞がジッとしていると思えますか?つまり、早期発見というのは、人間の安易な概念であって、「末期がん」の患者さんの癌ではないというだけです。


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早期発見とは、10ミクロンの癌細胞にとってみれば、境界線の細胞膜や基底膜細胞を超えることです。それは、400倍組織像の顕微鏡レベルで、初めて確認できる異常所見です。つまり、1ミリメートルのものが、40センチメートルのものとして観察できる状況です。例えば、直径4センチメートル前立腺を4センチメートル以下のMRI画像で、早期発見できる訳がありません。 MRI検査で発見できる前立腺ガンは、エコー検査でも触診でも確認できます。例に挙げる写真は、MRI検査で前立腺がんを疑われた患者さんのエコー検査の所見です。7㎜×4㎜×7㎜の大きさで、体積にして0.1㏄です。1センチメートル四方の立方体の10分の1の大きさです。触診でも確認できます。でも数億円もするMRI検査では、単疑われただけです。私のエコー検査と原始的な触診では前立腺癌を確定診断しました。検査とは、その程度のいい加減なものです。
癌を発見した際には、早期発見と考えないで、医師は対処しなければなりません。早期発見と診断すると、「早期発見」という言葉が「独り歩き」して、医師を油断させることになるからです。

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日本人の3人に1人が、ガンが原因で亡くなります。言い換えれば、これは日本人の特性と考えることができます。ある意味、日本人でありたいのであれば、癌を受け入れるしかありません。また、統計で分かるように、あらゆる病気や不慮の事故、自殺で日本人は死にます。これらの原因で死にたくなければ、何も考えずに外出もしないで引きこもり、テレビやインターネットをジッと見続け、定期的に人間ドックを受け続け、最終的には認知症になって、家族みんなに経済的に肉体的に負担と迷惑をかけて、老衰が原因で死ぬのが一番でしょうね。正常な考え方であれば、こんな死に方は、嬉しくもありません。家族みんなに惜しまれて病気で亡くなりたいものです。
人間は、いつかは死ぬというのは必然です。どんなに健診しても予防しても治療しても、必ず死ぬのが宿命です。秦の始皇帝てさえも、不死の方法を探すべく、多くの人と多額のお金を使って奔走しましたが、結局無駄でした。
以上のことから、人間ドックや健診で、早期発見にこだわることはナンセンスです。もしも、癌が発見された場合には、偶然でラッキーと喜びましょう。

コメント蘭で、人間ドックや健診の必要性を訴える方がおられますが、個人の好きずきと考えてください。例えば、私のような慢性腎不全は、早期の発見ができたでしょうが、今の医学では最終的には治せません。透析時期を数年遅らせる事くらいしかできません。癌の早期発見は、あくまでも偶然かラッキーの確率です。人間ドック=癌の早期発見ではないという事を認識して、人間ドックを受診するのは構いません。その際に、人間ドックの担当医師が、それぞれの分野で、どれ程の深い知識を持っているか質問するのが面白いでしょうね。

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