« 外科学会認定登録医 | トップページ | 自己啓発 »

第128噺(145噺中)「AGA 男性型脱毛症」

Kappa
私もご存知のように髪の毛が薄いです。「河童型」ではなく、「生え際前線後退型」あるいは「斎藤さん型」です。これは、今流行りのAGA男性型脱毛症です。

AGAは、男性ホルモンの代謝物質であるDHTジヒドロテストロンが原因とされています。AGAの治療薬で有名なのが、プロペシアです。テストステロンがジヒドロテストロンに変化させる酵素5-α還元酵素を抑制する作用を持っています。この作用は、前立腺肥大症の治療薬で使用されて有名なアボルブとほとんど同じです。

Saitosan
アボルブは、商品名を換えて、AGA治療薬「ザガーロ」という商品名で最近発売されています。プロペシアも世界的には、前立肥大症の治療薬として認められましたが、日本の臨床治験では有意差が得られずに、結局、前立腺肥大症の薬剤として認可を得られませんでした。その代わり日本では、AGAの治療薬として認められました。

前立腺肥大症の治療薬としてアボルブを使用すると、副作用として増毛が出現する患者さんがたびたび見かけます。患者さんは、この副作用をとても喜ばれます。ザガーロは自費診療になりますが、中年以降で前立腺肥大症の症状がある患者さんの場合は、保険診療でアボルブが処方できますからお得です。

ひと昔前には、ジヒドロテストロンは長寿のホルモンとされていました。ですから、ジヒドロテストロンを増やす生活や治療薬に期待がされていました。ところが、そのホルモンが前立腺肥大症やハゲの原因になったと分かり、今では「悪玉男性ホルモン」とまで呼ばれています。そのため、ジヒドロテストロンを減らす治療が主流になりました。考え方を変えれば、前立腺肥大症やAGAの患者さんは長生きの人かも知れません。逆に前立腺肥大症の治療とAGAの治療が、その人の長寿を妨げることになるかもしれません。

しかし、生命活動は決して単純ではありません。ひとつのホルモンだけで生命現象をすべての説明できるとは思えません。男性ホルモンが高い人が長生きすると思われていました。ある統計によると、男性ホルモンのテストステロンとジヒドロテストロンの割合で4つのグループに分けて、死亡率を調査した大規模研究の調査報告がありました。それによると、死亡率が一番高かったのが、男性ホルモンの一番低いグループでした。ところが、次に死亡率が高かったのが男性ホルモンの一番高いグループでした。こうなると、話がグチャグチャになって分からなくなりました。

しかし、生命現象には様々な要因が関与しているはずです。それなのに、二つの要因しか調査しなかったのが、研究者の発想の貧弱さです。男性女性に影響するホルモンがまだあります。それは女性ホルモンです。男性にも女性ホルモンであるエストロゲンというホルモンが副腎から分泌されています。つまり、テストステロンとジヒドロテストロンとエストロゲンの三者ホルモンのバランスが寿命に影響するのかも知れません。

事実、エストロゲンの多い女性の方が男性よりも長生きです。男性ホルモンのテストステロンと、その代謝物質であるジヒドロテストステロンが十分に分泌され、さらに副腎から女性ホルモンのエストロゲンが十分に分泌されれば、長生きするのかも知れません。このホルモンバランスは、若い時のホルモンバランスと同じです。つまり、若い時と同じホルモンバランスにすれば、長生きするのでしょう。

長寿のための人為的な治療としては、まずはテストステロンの注射です。80歳でエベレストを登頂した三浦雄一郎さんは、定期的にテストステロンの注射をして元気になったと言います。ジヒドロテストロンは、テストステロンが増えれば自動的に増加しますから、考えなくても良いでしょう。副腎由来のエストロゲンは注射をすればいいのですが、さすがに男性に女性ホルモンを注射する気持ちにはなれません。そこで前立腺のサプリでも紹介している大豆イソフラボンがおすすめです。大豆イソフラボンンは疑似性ホルモンですから、服用することで男性にも足りないホルモンの補充反応を示してくれます。テストステロンが不足していればテストステロンを、エストロゲンが不足していればエストロゲンの作用をしてくれます。事実、大豆イソフラボンのアグリマックスを服用すると、増毛します。

アボルブは、ジヒドロテストステロンを抑制する作用があります。ご婦人の場合、卵巣でエストロゲンの分泌が低下すると、相対的に副腎由来のテストステロンが優位になります。当然、ジヒドロテストステロンも相対的に増加します。したがって、高齢者のご婦人の頭髪が薄くなるのも、原理的にはAGAと同じです。AGAにならなくても、ジヒドロテストステロンの相対的な増加が、各臓器に負担を強いているかも知れません。コメントにあるように、ご婦人にアボルブを服用していていただいても効果が出てきます。ご婦人の体の中の男性ホルモンをアボルブで抑え込もうという考え方です。

|

« 外科学会認定登録医 | トップページ | 自己啓発 »

コメント

一年半ぐらい前からアボルブを飲んでいます。
前立腺ガンのホルモン療法と併用です。
頭髪がかなり昔のように生えてきています。
友人たちがびっくりしています。
私は頭髪などより治療効果だけが気になります。
前立腺の大きさは以前の半分以下になりましたが、副作用が心配です。
今週はMRIで甲状腺の腫瘍を調べました。
来週結果がでるので不安です。
結着が着き次第先生の所にお伺いしたいと思っております。
これからの治療の計画がどのようになるのか心配です。

投稿: 京都在住 | 2017/05/13 15:08

49歳、女です。
アボルブを飲み始めて三週間が経ちました。

陰部の痛みが軽減し効果を感じ始めています。

アボルブは大きいので年を取り飲み込む力が低下した時の事が心配です。

投稿: | 2017/05/13 15:31

49歳、女です。

「高橋先生のところに行けば何とかなると思っていたよ。ユリーフという流れになると思っていたよ。」

三年前、紹介状を握りしめ高橋先生を訪ねました。

ユリーフで痛みが軽減し涙が止めなく流れハルナール、フリバスを試しザルディアで一段と効果を感じ嬉しくて、また涙が零れたのを昨日の事のように覚えています。

高橋先生のblogから、たとえ、どんな些細な事であっても情報を取り零さないように何度も何度も読み返し今回アボルブを服用してみる事となりました。

陰部の痛みが軽減しアボルブに対し希望を持っています。

どうか、このまま治って欲しいと祈っています。

高橋先生、
情報を本当にありがとうございます。
日々blogにて論文を発表されていらっしゃるようですね。

投稿: | 2017/05/15 13:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 外科学会認定登録医 | トップページ | 自己啓発 »