第117噺(145噺中)「いびき・鼾・睡眠時無呼吸症候群」
医師が病気になって、初めて気がつくことがあります。
過去に、「睡眠時無呼吸症候群」について解説しています。この病気は、症状として睡眠中に長い時間呼吸していなかったり、熟睡できなかったりします。
その結果として、日中の居眠り、運転中の意識消失、商談中の居眠りなど、社会的にもたくさんの弊害があります。
さらに、この病気は、高血圧、脳梗塞、心不全、夜間頻尿、不眠症などの病気を悪化させます。
多くが、以前から「いびき」という症状が必須です。
いびきは、喉の奥・気道、つまり空気の通り道が狭く、その部分が激しく振動することで起きる現象です。その原因として、先天性の喉の異常、舌根の沈下、老化現象、極端な肥満などが挙げられます。
私も以前からイビキをかくことが多く、原因は肥満でした。ところが、歳とともにイビキも含めて睡眠時無呼吸症候群症状が出てきました。次第に血圧が高くなり、妻も心配したので、睡眠時検査を行いました。その結果、私も睡眠時無呼吸症候群の範疇に入ることが判明しました。
ところが、今回の入院治療により体から余分な水分を10キロ程除去してからは、イビキも無呼吸も消失したのです。つまり腎不全で排出されなかった余分な水分が、喉の組織を浮腫ませ、気道を狭くしてイビキを増強させ、その結果、睡眠時無呼吸症候群になったのです。
睡眠時無呼吸症候群は、専門家は耳鼻咽喉科の医師です。目の前の症状を治すだけに専念して、その原因である、例えば私のような腎不全を発見できるとは、到底思えません。私も口にする「専門外なので、そちらにお聞きください」と逃げられるのが落ちです。
睡眠時無呼吸症候群は、確立した一つの病名ではなく、たくさんの原因が考えられる症状名にしか過ぎなかったのです。ところが、医師も一般の人も、「睡眠時無呼吸症候群」という病名に、ひと安心して、それ以上の原因を追求しなくなるのです。
病気になって初めて、病気の本質が理解できるのです。私も含め医師は、過去の研究者が得た未完成の教科書的な知識しか得ていないのです。したがって、どんなに有名で有能な医師であっても、医師の世界だけでの社会的評価であって、病気の本質を完全に理解している医師は皆無でしょう。来院した患者さんが、治らないで「気のせい」と診断されて来ます。私なりの診察・検査を行って、病気の原因を伝えると、「大学病院の教授に異常なしと診断されたんですよ!」と、私の診断に疑問を持ちながら、自信持って言います。
過去の私の医療行為も、今から思えば深く反省するところです。
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