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第110噺(145噺中) 「下部尿路症の治療を続ける訳」

Lutsmecha
専門用語で下部尿路症という病名があります。
その範疇に入る病名は、前立腺肥大症、慢性前立腺炎、間質性膀胱炎、過活動膀胱、慢性膀胱炎、神経因性膀胱、膀胱痛症、前立腺症などなどいろいろです。一見、別々の病気のようですが、私は原因が全部一つだと考えています。

イラストに、その概要を示しました。
何らかの原因が、排尿障害を作ります。長い年月をかけて、排尿障害は膀胱や前立腺に負荷をかけます。その負荷は、膀胱や前立腺の構成する平滑筋に変性を促します。平滑筋は負荷がかかると、細胞内の核が焼失し、平滑筋の正常な反応が欠如します。

平滑筋の主な働きとしては、筋肉としての動力装置の働きがあります。平滑筋の変性で十分な働きをしなくなると、排尿障害がさらに強くなります。すると平滑筋にますます負荷がかかり、平滑筋はさらに変性する細胞が増えるのです。
平滑筋の細胞寿命は、おそらく1年以内(*)でしょうから、変性してダメになった細胞の代わりに、骨髄から平滑筋母細胞が供給され続けます。排尿障害の環境にさらされるので、新しく生まれた平滑筋細胞もまた変性してし病的な平滑筋になります。ですから、この負の連鎖を断ち切るためにも、排尿障害を継続して治さなければならないのです。
(*)間質性膀胱炎の治療で、水圧拡張術があります。治療効果が続くのは、平均で7~8か月以内とされています。つまり、水圧拡張術で破壊された平滑筋が再生して、再び病的な平滑筋になるまで8ヵ月かかることになります。供給された平滑筋母細胞が成熟した平滑筋になるまで4カ月、その平滑筋が病的な平滑筋になるまで4カ月と考えられます。この治療を繰り返すことで、平滑筋は再生せずに次第に線維化し、膀胱は萎縮してしまうのです。線維化は、瘢痕ケロイドがうずくように、膀胱刺激症状が強く出現してしまいます。

平滑筋の別の働きとして、感覚装置としての働きがあります。変性してしまった平滑筋からは、核が消失してしまっているので、常に過剰の情報が脊髄神経回路に流れ込みます。情報量が多過ぎると、その処置に困ってしまい、様々な症状が作られます。その症状に応じて、医師がいろいろな病名をつけているのが現実だと考えています。頻尿があれば、過活動膀胱か慢性前立腺炎か心因性頻尿、痛みがあれば、間質性膀胱か膀胱痛か前立腺症か慢性骨盤疼痛症候群などなどです。

動力装置としての平滑筋の緊張を緩めるのが、αブロッカーのハルナール、ユ~リーフ、フリバス)やPDE5阻害剤のザルティアです。
感覚装置としての緊張を緩めるのが、抗コリン剤(ベシケア、ウリトス、トビエース)やβ3剤のベタニスです。しかし、この作用はハッキリと分かれている訳ではないので、患者さんの様子を見ながら処方するしか方法がありません。


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コメント

高橋先生がお元気で現役の医師でいて下さる間は良いですが、それ以降は私達はどうしたら良いのでしょうか……。

投稿: | 2016/10/07 12:50

高橋先生に9月27日に手術をしていただき経過報告を兼ねて明日、受診希望で伺う予定でした。が、10月に入り急に患者さんが増え明日も仕事になってしまいました。

来週どこかのタイミングで伺います。
宜しくお願いします。

投稿: | 2016/10/07 16:11

秋になると夏場の心身の疲れが一気に出てしまうのでしょうか……?

10月に入ってから外来の患者さんが日に日に増え休日も出勤の日が増えました。

高橋先生に術後の経過報告をまだちゃんとしていない事、気になっていました。

来月、どこかのタイミングで伺います。

高橋先生の日々は相変わらずのご多忙でしょうが、どうぞお身体大切にお過ごし下さいますように。

社交辞令でもなく一般的な挨拶でも勿論なく高橋先生には本当に本当に長生きしていただきたいのです。

どうぞ、お元気でお過ごし下さい。🍀

投稿: | 2016/10/21 20:51

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