第106噺(145噺中) 「事実は小説よりも奇なり」
刑事ドラマを好んで観ます。
「相棒」、「臨場」、「七人の刑事」、「班長」、「科捜研」、「刑事コロンボ」などいろいろです。
内容は単純です。
事件が起き、犯人が単独か、複数か、代理殺人か、本人かです。動機がお金か、怨恨か出世の妨げか、事故かいろいろです。犯人がいかにも悪人だったり、一見善人だったり、生き別れた兄弟だったり、後半にチョコと出てきた人だったりいろいろです。
特に「相棒」は、何でもないようなチョコッとしたシーンが、事件のヒントだったりすることがあるので、油断なりません。まったく同じ内容は、ほとんどありません。脚本家の努力によるところです。
しかし、現実は脚本家も驚くほど、もっと怪奇です。子供のころから人を殺したかった、保険金殺人のためにビタミン剤と偽って風邪薬を大量に飲ませ、肝炎で病死させたとか、殺して食べてしまったとか、結婚を繰り返し、相手を次々に殺して保険金殺人を実行していたなどなど想像を絶します。「事実は小説よりも奇なり」です。
ところが、医療の世界では、現実の方が単純です。
PSA検査で値が高ければ、即、前立腺癌の疑いで前立腺針生検だし、慢性前立腺炎症状があれば、細菌性か非細菌性か気のせいが原因とされてしまいます。
ある患者さんのお話です。
患者さんのお母様が突然に血圧が高くなり苦しんでいました。それを見かねた息子さんは、専門病院にお母様を連れて行きました。ところが、血液検査もCT検査もMRI検査も、まったく異常が見つかりません。病院を幾つかまわっても、結果は同じでした。どの病院を受診しても、お母様の「ストレス」、「気のせい」、「ヒステリー」という診断で取り合ってくれませんでした。
インターネットでいろいろ調べたら、地方の国立病院で名医を見つけました。
その先生にお母様を診せると、もしかすると、副腎に塊の腫瘍ではなく、正常の細胞に散見した副腎腫瘍、褐色細胞腫かも知れないと診断したのです。その腫瘍を見つけるために特殊な検査を行ったところ病気が発見されました。非常に珍しい病気とのことでした。息子さんのあきらめない努力と、医師の知識が良い結果に結び付きました。
原因不明の病気を発見するためには、教科書的な知識や検査だけでは不十分です。珍しい病気に焦点当てるようなオタク的な検査をしなければ発見できない場合もあいます。
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