第109噺 (145噺中) 「血管年齢の誤解」
テレビでも有名な乳腺外科の医師が、血管年齢を若くするために、「ごぼう茶」を勧めています。
実年齢よりも20歳若くなるとうたっています。
普通に聞くと、血管年齢が若いほど良いように思えます。しかし、本当にそうでしょうか?
血管年齢に興味を持って、血管年齢を測定できる動脈脈波速度計測器を50万円ほどで購入しました。血圧の高い患者さんや糖尿病の患者さんの血管年齢を興味本位で測定しました。ある日、血管年齢が実年齢よりもとても若い患者さんに遭遇しました。その患者さんの家族歴をお聞きすると、癌家系の人でした。祖父、祖母、両親、親戚にかなりの確率で癌になった、あるいは癌で亡くなられた方が複数いたのです。
「!」もしかするとと思い、通院している患者さんの家族歴を片っ端からお聞きしました。癌家系の患者さんと思われた人の血管年齢は、みんな実年齢よりも若いのです。面白いほど、右にならえのように若いのです。
そこで、ある仮説を思い付きました。それは、「血管年齢が実年齢よりも若い人は、癌になりやすい」というものです。では、何故、血管年齢が若いと癌になりやすいのでしょうか?おそらく、血管年齢が若いと、長生きをし過ぎるからです。計算上、120歳〜150歳にまでなってしまいます。一族の中で長命の人間が増えれば、子孫に負担がかかります。現代日本では問題ありませんが、食糧事情が限られた世界では、子孫の隅々まで食料が行き届かなくなります。結果的に、子孫が途絶える事にもなりかねません。対策として、極端な長生きを作らなければよいことになります。その結果、血管年齢の若く長生きしそうな人間は癌で早めに殺そうとされるのです。では、癌にならないためには、どうしたら良いでしょうか?
具体的な症例を掲げましょう。
高橋クリニックのスタッフの一人です。本人は癌ではありませんが、実年齢56歳で血管年齢32歳と極端に若いのです。やはり、そうそうたる癌家系です。
前立腺肥大症で通院中の患者さんです。実年齢79歳で血管年齢70歳と若いです。予想寿命は102歳です。しかし、患者さんには脳動脈瘤と高血圧があります。常識的に考えて動脈硬化がある筈ですから、血管年齢は実年齢よりも高齢でなければ話が合いません。動脈硬化の影響のある持病がありながら血管年齢が若いというのは癌家系の特徴です。
甲状腺癌の既往があり、他医で高血圧をフルイトランという利尿剤で治療中の患者さんです。
実年齢74歳で血管年齢68歳、予想寿命99歳です。お母さまを始め兄弟も癌です。
高血圧が未治療の患者さんです。実年齢は65歳、血管年齢が47歳ととても若いです。予想寿命は99歳です。
この患者さんは高血圧の治療を全くしていないにもかかわらず、血管年齢が若いのです。もしも血圧の治療をすれば、もっと血管年齢は若くなり、もっと癌になりやすくなるかも知れません。
前立腺癌が心配で来院された患者さんです。
実年齢53歳、血管年齢43歳、予想寿命120歳です。お父さんを始め3人の伯父さんが全て癌という癌家系です。
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