第93噺(145噺中) 「超・栄養学」
栄養学では、牛肉も豚肉も鶏肉も魚も大豆もお米も、栄養素として含まれるタンパク質は、みな同じです。
私が慢性腎不全になったために、一時期タンパク質の制限がありました。1日60g以下という制限食です。私の奥さんは、全ての食材を計算して、献立を考えていました。牛肉100gにタンパク質は10g~20g前後、マグロ100gにタンパク質は20g~30gとうい具合にイメージと現実のタンパク質量にはギャップがあります
魚のタンパク質量はとても多いのです。栄養学的に考えても、とても優秀な食材です。昔の日本人は、米と、乳酸菌の豊富な漬物と味噌汁と煮野菜と、魚しか食べていませんでしたから、栄養学的には完璧で長生きできた筈です。ところが、このグラフで分かるように、江戸時代はもちろんのこと、昭和の初期であっても平均寿命は50歳を超えていません。戦後でも50歳前後です。
戦後、食事が欧米化して肉食が増えたことで、寿命がグングンと延びたように見えます。しかし、肉の単位当たりのタンパク質は明らかに魚より劣ることが分かっていますから、栄養学的には不思議なことです。しかし、同じ時代の欧米の寿命を比較すると、どの国も団栗の背比べです。日本よりは明らかに肉食の国であっても、さほど変わりないのです。
寿命の統計では、乳幼児の死亡率が左右します。しかし各国のデータが信用できません。なぜなら、戸籍制度を正確に維持しているのは、すべての時代を通して日本だけだからです。戸籍のない乳幼児の死亡率はカウントされません。そのことから考えると、戸籍の正確な日本の乳幼児の死亡率を考慮に入れている日本のデータは信ぴょう性が高く、同時代の世界の寿命に比較しても、おそらく一番だったのでしょう。
では、なぜ日本人の寿命が世界に比較しても急伸したのでしょうか?乳幼児死亡率の低下もさることながら、今までの日本食に肉食が多く入ったからでしょう。魚よりもタンパク質の少ない肉食でなぜでしょう?それは恐らく肉に大量に含まれるコレステロールの含有量が理由でしょう。コレステロールは体内に必要な各種ホルモンの原料だからです。
そう思って、各食材のコレステロール含有量を調べると、驚くことに意外な結果です。100g単位当たりのコレステロール含有量は、
ししゃも250mg、うなぎ230mg、鮎140mg、イワシ110mg、アジ90mgです。
ところが、牛肉80mg以上、豚肉70mg、鶏肉90mgと肉類の方がコレステロール含有量が全般的に少ないのです。ここでも魚が優秀です。
では、肉が魚に勝っている栄養学的な利点は何でしょう?実は脂肪、脂質です。
魚の脂質は次のようです。
ししゃも11.6mg、うなぎ21mg、いわし13.9mg、アジ12.3です。
比較して肉類はどうかというと、
牛肉40mg~50mg、豚肉10mg~30mg、鶏肉4~14mgです。全般的に肉の方が脂質が高いことになります。当然、カロリーも肉の方が高いことになります。つまり、脂質が高い、カロリーは高いことが肉の利点になります。寿命を延ばすためには高カロリーの食材が良いことになります。
しかし、脂質やカロリーだけが長寿の理由なのでしょうか?物事はそんなに簡単なものではない筈です。
そこで、私はこう考えます。以前に「いただきます!」のテーマで解説したように、食材には魂が宿っています。牛肉には牛の、豚肉にはブタの、鶏肉には鶏の、魚には魚の魂=生命力が宿っていると考えることができます。
魂の高さ、生命力の強さを比較すると、牛>ブタ>鶏>魚の順でしょう。つまり魚だけを食するよりも、牛肉を食した方が、生命力を多く取ることができる筈です。
だからと言って、牛肉ばかり食しても長生きできるとは限りません。おそらくは、人間はすべての生命の頂点に立っているので、すべての食材をまんべんなく摂取しないと長寿にはなれない生命だとも考えることができます。不自由な生命体とも言えます。この既存の栄養学を超えた考え方なので、「私は「超・栄養学」と名付けました。
この考え方は、あながち根拠のない荒唐無稽な考え方ではありません。
私たち人間か、母親の体内で、何十億の生命の進化を10ヵ月トレースしながら成長し、人間として生まれてきました。写真のように、ヒトは初めは魚のようであり、次第に爬虫類、鶏、哺乳動物と形が変化し、最終的には人間に変身するのです。ですから、何十億年の進化の過程・工程を復習しているのです。おそらくは、それぞれの時代の生き物の記憶が、DNAに深く刻み込まれています。すると、食生活の中に、それぞれの生物の本能の食欲を満足させなければ、人間としては天寿を全うできないのでしょう。
人によって、肉が大好きな人がいます。そのような人は肉食動物、例えばティラノザウルスという恐竜やオオカミのDNAが自己主張しているのかも知れません。菜食主義の人は、草食動物、例えば羊や牛のDNAが自己主張しているとも言えます。私は肉が大好きです。おそらく肉食獣のDNAが色濃く出ているのでしょう。
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コメント
私の叔父(母の兄)は7年前に101歳で大往生しました。アルコールは全く飲まなかったのですが、料理店を営んで朝からとんかつを食べていました。
3度の戦争に従軍して生きて帰ってきています。
とにかく甘い物と肉が大好物で魚は料理店なのにほとんど食べませんでした。
東京に歌舞伎を見に行くのが趣味で銀座の天ぷら屋や甘党の店をはしごしました。
戦地では戦闘を嫌い役者さんたちと現地で兵隊の歌舞伎の演出や時には自分で出演していたそうです。
その兵隊たちの一部の人が劇団「前進座」を作って今も活躍しています。
亡くなるまで一度もボケないで前の晩まで食べていました。
子供がいなかったので私を連れて東京中のうまい店に食べに行きました。
一日5食を食べさせられるのでいつも閉口していました。
肉の消費量と寿命とは関係あるのではないかと随分前から叔父を通して思っておりました。
寿命だけではなく老化にも関係すると思います。
90代でも毎日3時間は繁華街を歩いておりました。
【回答】
うらやましい叔父さんですね。
投稿: 京都在住 | 2016/07/15 13:26
>魚だけを食するよりも、牛肉を食した方が、生命力を多く取ることができる
>すべての食材をまんべんなく摂取しないと長寿にはなれない
タンパク質といえばボディビルダーですが・・・
某有名ボディビルダーさん曰く、「鶏肉だけ食べていると体がしぼむ気がする」 だそうです。
【回答】
面白い情報をありがとうございます。
そう言えば、私の祖母は96歳まで長生きしたのですが、肉が大好きでした。
時々、私がマクドナルドを買いに行く時は、祖母の分の、てりやきバーガーを買ってきて一緒に食べたのは良い思い出です。
投稿: | 2016/07/28 00:08