第97噺(145噺中)「自律神経失調症という都合の良い病名」
40代後半の男性が来院しました。
患者さんの主な症状は、頻尿と両足の痛みです。これまでの診察を受けてきた数々の医療機関では、自律神経失調症という診断でした。診断はついたのですが、治りません。そこで当院を受診しました。排尿障害が確認されたので、治療を開始しました。しかし、頻尿の症状は少し改善したのですが、両足の痛みや辛さが増すばかりです。さらには、胃がムカムカして、左首まで痛くなってきました。全身が辛くてだるくて仕事になりません。
結果はともかく、内視鏡手術を強く希望され、実施の運びとなりました。
ところが、手術前の検査で検査鏡が挿入できません。つまり尿道狭窄があったのです。膀胱頚部の観察ができませんから、当日の手術は断念しました。後日の手術のために、カテーテルを細いものから順に尿道に挿入し、最終的に18Fr(フレンチサイズ)を留置しました。18Frは直径が約6㎜です。内視鏡手術の太さが直径24Fr8㎜ですから、次回に期待して手術を終えました。
2日後に、再度患者さんの手術を行うことにしました。手術当日、患者さんの顔を拝見したら、明るく元気になっています。尿道にカテーテルが留置されているにもかかわずにです。尋ねると、足の痛みも胃のムカムカも首の痛みも軽減したというのです。カテーテルを留置したことで、排尿に関する膀胱頚部の負荷がなくなったので、関連痛が軽減したと考えられます。内視鏡手術の結果が期待できそうです。
尿道狭窄があったので長めにカテーテルを留置し、手術後6日目に無事にカテーテルが抜けました。その後、排尿状態は改善したのはもちろんのこと、死ぬほど辛かった両足の痛みと胃のムカムカと首の痛みは完全に消失したのです。
自律神経失調症という安易な診断は、何だったのでしょう?
自律神経失調症は、あくまでも症状名と考えるべきです。身体のどこかに震源地があり、その被害が震源地と異なる場所に起きたと考えるべきです。今回の患者さんは、膀胱頚部に病気があり、その関連痛が、両足の痛みに、首の痛みに、胃部不快感になったと考えられます。原因が分からないからと言って、安易に自律神経失調症と診断してはいけません。以前に警鐘を鳴らしたように、「病は気から」と言っているようなものです。
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コメント
私の職場は精神科、心療内科で10代のお若い方からカルテを見ると大正生まれの方まで様々な方々が受診されていらっしゃいます。
自律神経失調症、統合失調症、うつ病などの病名がつくのは日々、当たり前の事で、しかし
診察室でドクターと患者さんの話を聞いていると「この方は本当の本当には一体どこが悪く何に苦しんでいらっしゃるのだろう?」と、心の中で思ってしまいます。
診察室の中では圧倒的にドクターが強者で患者さんは弱者です。
殆どの患者さんは萎縮し従順な態度で出される薬を信じ飲み続けていらっしゃいます。
先日、食堂で総務課長を筆頭に10名近いスタッフさんが一人のドクターに対し謝罪し、ただひたすらに頭を下げていた場面に遭遇しました。後で聞いてみると食事の配膳の際、湯飲み茶碗を間違って置いてしまったという事でした。
ドクターとは病院内では圧倒的な王者で全てを制圧出来る?権力者なのか?と、思ってしまいました。
私も泌尿器科をドクターショッピングして、うつ病だとか精神科に行ったら?などと言われ
それこそが心の病になってしまった根元だと今ならわかります。
最近は精神科、心療内科で働く私こそが精神を病んでいて患者さんの方がよっぽど人として、素晴らしい面をお持ちだと感じるようになりました。
人間は死ぬまでは生きなければなりません。
私もこの病気になりボロ雑巾のようになってしまいましたが、それでも死ぬまでは生きなければなりません。
今は患者さんからの「ありがとう。」の一言だけで自分を支えています。
高橋先生に治療してもらい何とか生きていけるところまできました。
今でも、とても感謝しています。
投稿: | 2016/07/24 02:50
私が勤務している病院は入院患者500名くらいの精神科病院です。
その病院は診察科目が精神科、心療内科のみで、つまり心の病の方々の病院という事になりましょうか
病棟、外来、通所型ディケア、それぞれの部署での研修中に最も強く感じた事は患者さん皆、一様に極端にトイレが近いという事です。
精神疾患がそうさせているのか、いやいや元々、泌尿器に何らかの問題がある患者さんも多いのでは?と、思ってしまいます。
でなければあんなに頻繁にトイレに行かないでしょう?
などと思ってしまいます。
そして一歩間違っていたら私もこの病院に入院させられていたかも知れないという事です。
紙一重の違いです。
人間はとどのつまり食べて排泄する、ただそれだけの事と思えてなりません。
そこには人間として上も下もなく、ただ生きているだけです。
自律神経失調症と病名が付く人と、そうでない人との違いは何でしょう?
生きる事は果てしなく苦しく、ままならない事の連続です。
あちこちの泌尿器科で自律神経失調症、うつ病と言われ続けた私は今、少しでもそういった方々に寄り添えられるよう日々、格闘中です。
投稿: | 2016/07/24 17:07
私は病院で働いています。
自律神経失調症、統合失調症、認知症との病名が付いたえっちゃんは、しかし、自分よりも症状が重いきよちゃんの事をいつも気にかけ手を引きながら歩いています。
えっちゃんはとても美人顔で身なりも小綺麗でお化粧もきちんとされていて一見、病気とは無縁の方のように見受けられます。
えっちゃんはいつも「ありがとう。」、「ありがとう。」が口ぐせで、しかし、その「ありがとう。」に私は大きな力をもらっています。
ある時、あるドクターが患者さんがいないところでこう言われました。
「人生、サボった結果があの姿なんだよ。」
そうだろうか?
そうなのだろうか?
私も自律神経失調症と言われ、今は間質性膀胱炎、排尿障害と格闘しています。
それは努力が足りないから治らない?
サボった結果の現状?
病院では圧倒的に完全に患者さんは弱者だと思います。
自己責任、自助努力不足の名の元に患者さんが精神的にどんどん追い詰められていっている気がします。
自律神経失調症というのは一体、どんな病気なのでしょう?
えっちゃん、私も自律神経失調症、うつ病、ワガママ、面倒な患者とあちこちの泌尿器で言われたけど何とかこうして生きているよ。
えっちゃん、明日もジタバタしながら生きていこうね。
投稿: | 2016/08/01 20:50