第94噺(145噺中) 「夜間頻尿」
先日、夜間頻尿に関する講演会があり、参加しました。
泌尿器科の立場と内科・精神科の立場の、それぞれの専門の先生方が壇上に上がり、総合的な内容の講演でした。
泌尿器科の立場に関しては、すべて私が知る範囲の内容と、私にとっては否定的な内容が混在していました。常識的な範囲を超えない程度の内容でした。
ところが、内科的立場の内容と精神科的立場の内容とは、とても興味が惹かれました。
内科的立場の観点は、こうです。
高齢者になると、体内に貯留したナトリウムを夜間睡眠中に大量に排泄するというのが、高齢者の生理的現象だそうです。
すると、ナトリウムの移動のために水分が一緒に移動します。それが多尿になり、「夜間頻尿」になるそうです。その現象を防ぐためには、ナトリウム摂取量を控えることと、ナトリウム排泄を昼間に促進させなければなりません。
ナトリウムの摂取量を控えるのは、減塩食が勧められます。厚生労働省が推奨するのは、1日6g以下です。
ナトリウム排泄を昼間に促進させるためには、サイアザイド系の利尿剤、例えば、フルイトランを午前中に服用すれば良いとのこと。
夜間頻尿で睡眠時間が短いと、高齢者の死亡率が高くなるという統計結果があります。死亡率が一番低いの6時間半から7時間半の間です。6時間半より少なくても、7時間半より多く寝ても死亡率は高くなるという事実があります。
精神科の立場の観点は、こうです。
睡眠が非常に浅いと、膀胱のチョットした刺激により脳が覚醒するために、「夜間頻尿」になるのだそうです。睡眠が浅くなる理由にはいろいろあり、睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患が原因だそうです。特に睡眠時無呼吸症候は、腹圧がかかり夜間尿失禁になります。そして、抗利尿ホルモンの分泌が低下して多尿になります。
精神科領域にレストレスレッグ症候群Restlessleg syndrome、別名「むずむず病」という病気があります。筋肉の異常感覚を訴える病気です。この病気で、夕方から夜にかけて膀胱炎症状、頻尿夜間頻尿を訴える患者さんがいるそうです。治療はパーキンソン症候群の治療に使用されるドーパミン作動薬が効果的ということ。
夜間頻尿を膀胱と前立腺だけの病気だと思い込んでいると、とんだ誤診になります。
疫学的な調査では、夜間頻尿が3回以上の患者は、6年後の死亡率が断トツに高くなるそうです。ですから、夜間頻尿を軽く見てはいけません。
【講演会後の懇親会の様子】
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