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ホラ吹き爺さん

Hakurou 私が医学生の頃の話しです。母の患者さん(私の母は歯科開業医でした)が自宅に上がり込んで、お茶を飲んでいます。 この患者さんは70歳前後の大柄の爺さんでした。歯の治療のために、週に何回も自宅で顔を合わせることを覚えています。そのうち、私たち兄弟と話しをするようになりました。 Morzel 話しの内容は、ほとんどが戦時中の話しでした。この爺さんは戦時中に中国大陸に渡っており、そこでの活躍?を嬉々として話していました。愛用のモーゼル拳銃で敵を何人も倒したとか、中国拳法で敵と格闘しながら崖から転落したが、その爺さんは助かり、敵は絶命したとか・・・。当時は放映されていませんでしたが、インディージョーンズの中国大陸版ともいえる活劇でした。 Mangakohinata 最初のうちは、初めて耳にする話だったので、興味深く聞いていました。戦後の黒幕で有名な児玉誉士夫は手下だったとか、船舶振興会の笹川亮一はぶっ殺してやりたいとか、中華人民共和国の国歌は自分を讃える歌などと話がだんだん大きくなっていくのです。しかし何回も会ううちに、内容が似たり寄ったりで、挙句の果てには、同じ話が何回も出て来るのでした。大学生の私も弟も、さすがに飽きてしまい、その爺さんが自宅に上り込んでいるとわかると、自室にこもり会いませんでした。 当時、少年マガジンで横山光輝原作の漫画で、中国大陸で活躍する日本人の活劇漫画が連載され始めました。毎週楽しみにして読んでいましたが、ある時フッと気が付くことがありました。内容が、あのホラ吹き爺さんの話と酷似しているのです。そして詳細に調べると、実話、自叙伝をもとに描かれた漫画だったのです。主人公の実在の人物は、小日向白朗(こひなたはくろう)、中国名が小白龍(しょうはくりゅう)で、あのホラ吹き爺さん、その人でした。 歴史に名を残した人物であっても、過去の自分の思い出や呪縛からは逃れることが出来ないと知ったエピソードでした。

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