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第88噺(145噺中)「治癒力♯2」

以前にも治癒力についてお話ししていますが、今回は視点を変えて解説したいと思います。
風邪や怪我などで回復する私たち人間の治癒力は目を見張るものがあります。しかし、ひとたび慢性疾患にかかると、なかなか治りません。場合よっては死に至ることもあります。そのような最悪の場合は、単に運がなかったと思われることが多いのですが、本当にそうでしょうか?

治癒力を自他ともに実感出来るのは、風邪や怪我などなの場合に限ってのことだということを知らなければなりません。つまり、外因性の病気や怪我に限ってのことなのです。
外因性の病気とは、ウイルス性疾患、細菌性疾患、外傷です。生命は外的攻撃に対しては強いのです。白血球やリンパ球が活躍する免疫力がその最たるものです。また、怪我によって生じた組織欠損に対する修復力にはビックリします。自分の命を脅かす外的脅威に対しては、本当にとても強いのです。だから、治癒力で人は治るものだと誤解してしまうのです。

ところが、自分の内なる攻撃に対しては、からしきダメなのです。例えば、私のような糖尿病や高血圧、動脈硬化、高脂血症、痛風、癌、腎炎、膵炎、胆嚢炎、慢性肝炎、近眼、老眼、乱視などは自力では治せないのが一般的です。何故でしょうか?それは、私たち生命は何十億年もかけて生存のために、命がけで外敵と闘い生き残って来たからです。外敵によって仲間が死ぬことの方が、寿命で死ぬよりもはるかに多かったからです。そのため、内的病気に対しては、長い年月の間、その対策を講じていなかったのです。その結果、内的病気に対しては、免疫力も組織修復能力も空振り、もしくは悪化する原因となり、私たちは内的病気に負けてしまうのです。

では、その対処の仕方がないのでしょうか?そんなことはないでしょう。恐らく、内的病気を外的病気として認識させれば、可能なのではないでしょうか。
例えば、私のような糖尿病の場合、戦前はほとんどありませんでした。戦後、毎日の食事のカロリーがとても高くなり、さらに高タンパク、高コレステロールの食生活が糖尿病を作ったと言っても過言ではないでしょう。対策として、高カロリー、高タンパク、高脂肪を外的攻撃と見なして、その逆の低カロリー、低タンパク、低脂肪の戦前の食生活に切り換えれば糖尿病は改善します。ところが、高カロリー、高タンパク、高脂肪が、現在の日本の長寿の要因ですから、これでは糖尿病にはならないかも知れませんが、早死にしてしまい、本末転倒です。
そこで、従来の日本人が多く摂取していた炭水化物、つまり米、そば、うどん、パンなどを血糖を上げる外的攻撃と見なして、極力控えてあげれば糖尿病は改善し長寿が保てることになります。これが、今流行りのローカーボハイドレート、略してロカボと称される糖質制限健康法です。

動脈硬化の原因がコレステロールであることは衆知の事実です。現代医療では、コレステロールを敵と見なして、コレステロールを下げる治療に躍起です。しかし、さほど効果が実感できないのも事実です。これはコレステロールを外的攻撃と見なすところに失策の原因があります。まず、コレステロールが何故高くなったのかについて考えずに、ただひたすらにコレステロールを下げることしか考えない短絡的発想がいけないのです。ある意味、教科書的発想に他ありません。
コレステロールが上がるのは、更年期になってからです。つまり男女共に性ホルモン、男性ならばテストステロン、女性ならばエストロゲンが低下するために、ホルモンの原料であるコレステロールを肝臓で大量生産するために起きる生理学な現象です。基礎医学、生理学、解剖学、生化学を勉強すれば容易に想像できます。しかし臨床に集中する余り全体像が見えなくなり、さらには本質が見えなくなっているのです。コレステロールを薬でいくら下げてあげても、ホルモンが正常に回復しない限り、肝臓でせっせとコレステロールは増産されてしまいます。方法は簡単です。ホルモンの低下を外的攻撃と見なして、その逆のホルモンを高くして上げれば良いことです。大昔であれば、そのようなことは不可能でしたが、現在では、合成ホルモン、テストステロンやエストロゲンを注射したり経皮的に投与したりできますから、容易にコレステロールは下げることが可能です。

私のような慢性腎不全の場合は、何を外的攻撃と考えれば良いのでしょうか?・・・現在、私も思い付きません。恐らく、私は手遅れでしょうが、一生懸命に思案中です。

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