第71噺(145噺中) 「膀胱と直腸は双子の兄弟姉妹」
便秘をすると尿意が頻繁に感じることがあります。また、頻尿の患者さんには便意も生じることがあります。
尿は腎臓・尿管・膀胱・尿道という泌尿器を通過し、大便は食道・胃・小腸・大腸・直腸という消化器を通過します。臓器は別々の役割を担っているのに、不思議に思われる方も多いでしょう。
その答えのヒントになるのが、この発生学のイラストです。
胎児の発生初期には、「総排泄腔」という袋状の臓器が胎児の内臓の一番下にあり、そこに胎児の老廃物(尿・消化管液)は集められ、へその緒を通じて母体に捨てられていました。
腎臓は胎児の時も常に活動して尿を産生していますから、出産まで膀胱と臍の緒は交通しています。胎児は食事をしていませんから大便は作られずに、わずかな腸液だけが分泌していて、後に出来る肛門から羊水に排出されています。
胎児が成長すると、総排泄腔の中央あたりに「尿直腸中隔」という壁が延びてきて、膀胱と直腸を上下に分割するのです。結果として総排泄腔の上が膀胱に、下が直腸になります。膀胱も直腸も元々は一つの臓器だったので、脊髄レベルでは神経支配が本当に隣り合わせです。中には膀胱と直腸の神経が一部共用している人も存在するので、尿意と便意が密接に連動する人がいるのです。
また、膀胱出口と直腸出口も元来は一つでしたから、成長をしてそれぞれが独立していても連動しやすくなります。その証拠に排便する時に排尿してしまうのも、その名残です。肛門括約筋が開くと、尿道括約筋が8の字に連絡しているので連動してしまうのです。
この知識があれば、日常生活を快適にするのに応用できます。
前立腺肥大症などの排尿障害がある人は、便秘に注意しましょう。直腸に溜まっている大便を出そう出そうと身体が思うと直腸を刺激しますから、その刺激が膀胱をも刺激し頻尿や残尿感になります。逆に直腸が大便を保持しようと頑張ると、膀胱括約筋も頑張ろうとするので排尿障害が強く出ます。オシッコガ出にくい場合には、排便するように肛門を開くと、尿道括約筋も開くので、おしっこが出やすくなります。
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